内容説明
冬の納沙布岬で、森下義和以下GRTテレビ「突然おじゃま虫」のスタッフが流氷づたいにアルコールをねだりにくるソ連兵を待ちかまえていると、なんと、ソ連正規軍が上陸を開始。またたくまに北海道は占領されるが、奇怪なことに在日米軍はもぬけのカラ!―思想も、宗教も、国家の目標ひとつない、金満日本の虚妄を戦争シミュレーションと「饒舌」で痛罵したスラプスティック大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sakadonohito
14
現在でいうところのロシアが日本に攻め込んで北海道を占領する。ドタバタコメディなノリで展開する筒井節前回の物語。最終的にとあるインディアンがデウス・エクス・マキナする。なんとなく読み始めたがタイムリーな話題ではあるなと思った。2022/11/27
gushwell
9
自炊してiPhoneで再度。アメリカとソ連のトップが裏取引をし、ソ連軍が北海道に攻めてくる。そんなだから、当然米軍は助けに来ない。日本の自衛隊も役に立たない。日本はかろうじてゲリラ戦で対抗するが... 1980年代当時の出来事や風潮を風刺した筒井康隆ならではのドタバタ戦記。小説だから笑って済ませられるけど、今の時代笑ってばかりはいられない。こんな小説書いて発表する筒井康隆は凄い。2015/05/23
hirayama46
7
筒井康隆の長編読み残し。米ソの冷戦下、日本の政治的動向について痛烈に風刺した一冊。小説における実験性について一区切りつけたあとの、ちょっと初期作に回帰したような感覚がありました。そうは言っても饒舌・楽譜・メタフィクショナルな仕掛け・同じ顔の別人などと技巧の凝らされてもいます。ただ、それぞれの要素がちょっと半端に感じられる部分もありました。2017/01/23
miroku
5
皆自分の都合のみという状況というのは、現実そのものであるが、考えてみればこれが一番危機的状況なのだ。2010/06/16
渡邊利道
3
ミュージカル調で展開する北海道にソ連が攻めてくるドタバタ戦争小説楽譜付き。シュミレーション小説のパロディであり、ポストモダン思想のパロディで、両者と相性のいいメタフィクションを少しずらして使っている。演劇というか筒井康隆大一座の経験が深く根を下ろしているようで台詞劇の部分が一番面白く、いま読むとわりと普通のロマンスだったりギャグだったりするところの普通の巧さをサクサク楽しんで読める。ポストモダンのパロディはイマイチで、これはいまとなってはその流行が嘘のように消えてしまっているためもあるだろう。2017/10/06