内容説明
見知らぬ夜の街。裸の美女に案内されて、奇妙な温泉の洞窟を滑り落ちる…エロチックな夢を映し出す表題作。江戸末期、アメリカより漂着した黒人たちと、城をあげてのオールナイト・ジャムセッションが始まる!底抜けに楽しい傑作「ジャズ大名」など、幻想小説、言語実験、ナンセンス、パロディ、純文学にいたるまで、著者独自の迷宮的世界を見事に展開する、変幻自在の18編。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。’97年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。’02年、紫綬褒章受章。’10年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
69
退屈なお話からぐいぐい惹きこまれるお話まで百花繚乱。純文学あり、SFあり、ホラーあり、お色気もあり。まさに筒井康隆の真骨頂。『かくれんぼをした夜』、『傾斜』、『ジャズ大名』が良かった。2017/03/24
GaGa
54
まず初っ端「中隊長」から頭がおかしくなる。だけれども「かくれんぼをした夜」とか心和む作品もあったりする。「寝る方法」「冷水シャワーを浴びる方法」は今ではコントのネタになりそう。実験小説をたたみかけて、本書で一番の傑作は「ジャズ大名」再読ですが、筒井ワールド満載の一冊!2013/02/26
saga
52
【再読】18篇の短編集。『虚人たち』と同じように、段落下げを極力少なくした作品が多い。映像で言えば、長回しを楽しんでほしいということか? 表題作がやはり印象的。温泉隧道が、本当に交通機関のように使われている街。そして、そこには湯女のような女性が登場するが、題名ほどに淫靡な内容ではなく、むしろ健康的なエロティシズムを感じた。2022/11/06
yumiDON
51
言葉遊びやSF風のものから皮肉の効いた話まで盛り沢山な短編集でした。裏表紙に書いてあるように、まさに迷宮。迷い込んだら、自分が迷宮にいるのか、迷宮が自分なのか分からなくなる、と言った様相。日本語ってすごいな、と思うような巧みな言葉遊びが面白く、言葉の裏側をかくような筒井さんのセンス、流石です。「かくれんぼをした夜」や「遠い座敷」の不思議などこかノスタルジーを感じる作品もよかった。「寝る方法」「一について」「日本地球ことば教える学部」は面白くて何度も吹き出してしまった。ポケなさい、使いたい。2017/05/03
メタボン
41
☆☆☆☆★ 芥川のトロッコにも似た読後感の「遠い座敷」は何と言っても傑作。私の中では筒井短篇ベスト10に入る。言語遊戯や実験的な作風の作品も多く「日本地球ことば教える学部」「中隊長」「昔はよかったなあ」「インタヴューイ」「寝る方法」「早口ことば」「一について」「歩くとき」「また何かそして別の聴くもの」。表題作は、私もこんな女性に温泉を案内してもらいたいと憧れてしまった。2022/01/02