内容説明
喋り慣れた日本語も、書くとなると話が違う。文章を上手に書くことができたら…。だが、「話すように書け」と人は説くけれど、「話すように書け」ばいい文章が書けるのか。簡潔ならばいい文章なのか。いや、そんな単純なものじゃない。文章術の極意は奈辺にありや。文学史にのこる名作から現代の広告文までを縦横無尽に駆使して、従来の文章読本の常識を覆す井上ひさし式文章作法。
目次
滑稽な冒険へ旅立つ前に
ことばの列
話すように書くな
透明文章の怪
文間の問題
オノマトペ
踊る文章
冒頭と結尾
和臭と漢臭
「和臭と漢臭」拾遺
文章の燃料
形式と流儀
読むことと書くこと
著者等紹介
井上ひさし[イノウエヒサシ]
1934‐2010。山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鏡心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いちねんせい
30
作者の膨大な知識量にただただ驚くばかり。動詞一個では力が足りぬ、複合動詞やオノマトペの力を借りようとか、ははー!と思わず手をたたいて喜ぶ知識量の乏しい私。文豪の文章や広告文の分析もユーモアたっぷり。高校生の頃に読んでいれば!と思わずにはいられないが、何事も遅すぎることはないのだ!2019/03/05
田氏
28
文章読本は丸谷→谷崎→三島と、あと吉行淳之介編のアンソロジーも読んだが、その中で本書は、自分が興味を引かれる論が多かった。美学の色の濃い三島読本や谷崎読本よりも、文体の根源的な部分について思索を切り込んでいる…というのは、本書がそれらへのアンチテーゼという側面を有しているから当然なのだけど。「良い文章とは澄んだ文章である」のような観念に対し、良い文章は読むものに関心をもたせる文章だ、と再定義することで見直しを迫る。ラーメンでいうと清澄な醤油スープだけやのうて味噌も豚骨もあるやん、みたいなところか。違うか。2020/05/25
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
21
これまで「してはならない」と言われてきたことを、時には大家と呼ばれる人たちにもかみつきながら、豊富な用例を駆使して次々にひっくり返していく文字通りの『自家製文章読本』。すぐに活用できる技術が紹介されているわけではないが、指摘の一つひとつに学ばされることが多く参考になる。個々の問題とは別に、“言葉を通じて過去と未来につながるわれわれは、なんとかましな文章を綴ろうという努力によって歴史に参加するのだ”との言葉も印象的。真摯に日本語に向き合った力作ゆえの難解さもあるが、読んでよかったと思える一冊だった。2011/08/17
風柳
14
谷崎潤一郎の文章読本は一読したことがあるので、この本でちょくちょく引用される時は面白かった はえ〜と思いながらも、あまり頭にはしっかり残らない様子。ただ、時折ふとこの本のエッセンスを想起できればそれで良いのだとも思う。2022/04/21
あふもん
12
結構難しいことでも、何となく理解させてくれるというかわかりやすいとうか。何度も読んで少しずつ体と心に染み込ませたい本です。あと井上さんの日本語に対する「熱」みたいなのも感じれます。2010/11/16