新潮文庫
江戸の組織人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 300p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101164441
  • NDC分類 210.5
  • Cコード C0121

内容説明

江戸時代の武士たちも、一人一人は幕府という巨大機構の歯車の一つに過ぎなかった。そこには、現代と同じく薄給に泣き、格差に憤り、組織の論理に圧迫される人間の姿がある。時代劇などで身近な町奉行所から江戸城中のエリートである目付たち、そして御庭番や大奥まで、幕府の現場組織の実態と人間関係をつぶさに検証。組織人として生きる江戸の人人の処世と喜怒哀楽を解き明かす。

目次

第1章 武士という名の組織人
第2章 大江戸治安機関の組織人
第3章 財政・出先機関の組織人
第4章 江戸城内の組織人
第5章 処遇と処世の組織論
第6章 組織人としての田沼意次―出世と組織の関係を考える

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mura_海竜

83
江戸の組織。効率的に長く世を治めていた仕組み。それが知りたく本書を取る。効率的というよりも絶対的な平和が寄与していた。それはチラチラと文の隙間から見える将軍の威光。格式・位の階層化。主君や上司、親の密告が許される判断基準は役に立った。巻末に田沼意次の素晴らしかった点をあげる。本書は宮部みゆきさんとの対談形式の「江戸学講座」から2冊目。2017/05/18

エドワード

19
江戸時代と現代は違う。基本的人権も民主主義も無い。男尊女卑で家父長制。にもかかわらず、私たちが江戸の時代劇に共感するのは何故だろう。それは人と組織の関係に共通するものがあるからだ。キャリア奉行と叩き上げ与力・同心の相克。上司を守るために矢面に立つ部下。賄賂と役得。戦国時代を夢のある時代と持ち上げる人には、二百年の泰平の世、驚くべき少人数で百万人都市の治安を維持した江戸の組織を評価して欲しい。既得権益の悪弊を正そうとした松平定信の寛政の改革は不成功に終わったとされるが、現代の政治にも必要な志を感じる。2017/03/29

kayak-gohan

16
江戸幕府は圧倒的な武力を背景として樹立されたものであったが、時代が進むにつれて徳と法が国家運営の基本理念として浸透していった。それと並行する形で統治機構としての幕府はその内部における官僚制を整備・充実させていったと考えることができる。本書は客観的かつ合理的な史料考証により、その精緻な官僚組織に生きる武士の実像が浮かび上がってくる。昇進を目指して実直に勤務に励む姿は現代の官吏やサラリーマンと同じである。2023/10/26

さきん

10
町奉行=東京都知事+東京地方裁判所裁判長+警視総監。辻番=交番。御庭番=情報局員などなど。江戸時代の社会システムがよくわかる。現代から見ると、いかにも日本らしいと思う良い仕組みや、無駄だと思うシステムが混在している様子がよくわかる。必要な仕事を必要な分量それぞれ分け与えるのは今も昔も難しいようである。田沼氏の業績はもっと見直されても良いと思った。2015/07/22

TERRY

2
江戸幕府の官僚機構の優秀さとその限界。あくまで平時のものであり、将軍の絶対的権力が前提のため、19世紀半ばに脆くも崩壊することに。ただ、江戸の奉行所にオープンデーがあったり、謹厳なエリートである目付が大晦日だけは羽を伸ばす習慣があったり、意外にも人の気持ちを考えてるのが面白い。2019/08/19

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