内容説明
大正15年5月、十勝岳大墳火。突然の火山爆発で、家も学校も恋も夢も泥流が一気に押し流してゆく…。上富良野の市街からさらに一里以上も奥に入った日進部落で、貧しさにも親の不在にも耐えて明るく誠実に生きている拓一、耕作兄弟の上にも、泥流は容赦なく襲いかかる。真面目に生きても無意味なのか?懸命に生きる彼らの姿を通して、人生の試練の意味を問いかける感動の長編。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922‐1999。旭川生れ。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。間もなく肺結核と脊椎カリエスを併発して13年間の闘病生活。病床でキリスト教に目覚め、1952(昭和27)年受洗。’64年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点』が入選、以後、旭川を拠点に作家活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
305
一冊の本を読み終え、少し心が清らかになった気がするとか、少し人に優しくなれそうだとか。そんな気持ちを抱けたなら、それはきっと素晴らしい読書体験ができた証だと思う。私にとって本書はそんな一冊『泥流地帯』正直いささかも興味を刺激しないタイトルだ。大切な読友さんに紹介頂いた。北海道の貧しい村落の賢き男が主人公。富む者、貧しき者の格差をドラマチックに描き、清き心の眩しさに没頭する!しかしタイトルの意味は微塵も感じない。五郎の『まんま』に涙して『泥流地帯』の示す悲劇に涙した!私より若き方々、必読の書と心得よ‼️🙇2019/11/28
おしゃべりメガネ
190
とにかく圧倒的な作品で、あらゆる描写が圧巻でした。五百頁超の大作でしたが、わずか2日で読了してしまうほど、リーダビリティの凄まじさは見事です。本作が40年以上も前に書かれた作品とはとても思えないほど、今読んでも全く違和感はありません。ある貧しい百姓一家の物語で、主人公「耕作」を中心に物語は展開していきます。祖父が本当に人格者で学ぶべきトコがたくさんあり、祖父の一言一言がとてつもなく素晴らしいです。主人公が成長するに従って繰り広げられる人間模様のつながりも物語を後押しします。続編が気になって仕方ないですね。2020/09/08
遥かなる想い
118
三浦綾子の本は誠実に生きる人々に襲い掛かる苦難を描くものが多いが、この本も苦難=十勝岳の大噴火に置き、それでも健気に生きる人々を描いている。この本の軸は兄弟だが、テーマはぶれることがない。
s-kozy
106
大正6年から15年までの話。場所は北海道は上富良野の市街からさらに一里以上奥に入った日進部落。小作農の家で育つ耕作とその兄、拓一の物語。10代から成人までを真面目に生きた彼らの前にも自然は容赦なく猛威を振るう。じゃぁ、いい加減に生きた方が得なのか?いやいや、損得の問題ではない、真面目に生きること、真摯にことにあたることの価値に思い至らさせてくれる一冊。高校生くらいまでに読んでおくといいなぁ。大好きな住井すゑさんの「橋のない川」を思い出しました。再読しようかな。2015/04/21
夜長月🌙
89
人の心のあり方そのものを問う感動作です。終盤の兄弟のやり取りには涙しました。十勝岳の山つなみが何十年もかけて開拓した農地も家も人もなぎ倒します。それまでに懸命に生きた人たちはなぜ報われぬ死を受け入れなくてはならないのでしょうか。からくも生き残った主人公とその兄。特に兄の拓一は報いを当てにしてまじめに生きるのではなく何の見返りも求めずに実直に生きると言い切ります。幸福な人生とは何か考えさせられました。2020/05/28