内容説明
足軽という身分に比して強すぎる腕前を持ったがために、うとまれ、踏みにじられ、孤独においこまれた男。秋山小兵衛はその胸中を思いやり声をかけてやろうとするのだが、一足遅く、侍は狂暴な血の命ずるまま無益な殺生に走る…表題作「狂乱」。ほかに、冷酷な殺人鬼と、大治郎に受けた恩義を律儀に忘れない二つの顔をもつ男の不気味さを描く「仁三郎の顔」など、シリーズ第8弾。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923‐1990。東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
145
ここには女を中心とした話が多く、全部で6つの話が掲載されています。ある意味女性が主人公のはなしなのでしょう。主人公や息子の奥さんも絡んだり手裏剣の名人も出てきたり、いろいろ楽しめます。「狐雨」というのは池波さんにしては珍しい物の怪が絡むような話です。2017/08/17
ゴンゾウ@新潮部
106
オンナのシリーズ。剣客の三冬とお秀に加えおはるまでが大活躍。毒婦に始まり秋の炬燵まで男を翻弄する悪女が登場。そしてファンタジー色の作品もあり面白かった。新たな剣客が垣間見れてよかった。2017/03/12
yoshida
105
剣客商売シリーズ第8弾。安定の面白さ。今回は様々な女性が印象に残る。久しぶりに登場する手裏剣お秀。純粋だった若侍を誘惑し、夫を共に殺めるお絹。得体の知れぬおきよ。それぞれに個性があり読ませる。三冬やおはるも活躍し、飽きずに読める。「狐雨」は異色の作品。かつて自分を助けてくれた娘の為に、白狐が技量の欠ける剣客に力を貸す。白狐は伏見稲荷に戻らねばならず、助力出来る期間は限られている。剣客は秋山道場で必死に稽古をする。人間の哀切や、冴える剣技、魅力的な人物、美味しそうな料理。多くの魅力が詰まった名シリーズ。2021/07/23
優希
102
面白かったです。今回は全体的に活動的な雰囲気がありました。ファンタジーの要素を感じつつも、全体的に人間の闇の一面を書いている印象です。人間の持つ顔は1つではないと教えられたような気がしました。おはると三冬の凜とした佇まいが仄かな光を放っているようです。小兵衞の若き妻でしかなかったおはるですが、この巻に来てようやく剣客の妻らしくなってきましたね。2016/07/18
KAZOO
96
何度目かの再読ですが、このような本もいろんなジャンルを読んでいるのですが安心して読める本です。今回は「狐雨」がやはり印象に残ります。3年間のあいだだけキツネがその人物に憑いて強くなるので、その間に本当に強くなるために稽古に精を出すということでちょっと変わった感じがします。「仁三郎の顔」がいつ読んでも中途半端に終わっているのではないかと感じています。2023/10/06