内容説明
「今に見ちょれ」。薩摩藩中でも「唐芋侍」と蔑まれる貧乏郷士の家に生れた中村半次郎は、だがその逆境に腐ることなく、いつの日かを期していた。秀抜な美男子で気がやさしい。示現流の剣は豪傑肌に強い。恵まれた資質のままに精力的に日を送っていた二十五歳のある日、半次郎は西郷吉之助と出遇う。時は幕末、惚れ込んだ男=西郷につき、半次郎は水を得た。京の町に“人斬り半次郎”の名が轟く。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923‐1990。東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
95
「人斬り半次郎」の異名で知られる中村半次郎。維新後は桐野利秋。明治新政府草創期に陸軍少将となるも下野し西南戦争で亡くなる。桐野利秋について知っているのは、この程度。池波正太郎さんの筆で読み易い。薩摩の郷士である中村半次郎は腕に覚えがある。評判を聞いた西郷吉之助に見出され、幕末の京で勇躍する。初めは剣しか知らぬ半次郎は契りを交わした法秀尼の下、文にも励む。意外な密偵の才も活かし立身する。国許の幸江、松屋のおたみに想いを寄せるも叶わず。一層働き出す半次郎。魅力溢れる半次郎の描写。「翔ぶが如く」も読みたくなる。2022/10/22
HIRO1970
68
⭐️⭐️⭐️読みはじめて直ぐに気付きましたが、何故か先に後半の賊将編から読んでしまっていたのはかなり迂闊でした。何と正ちゃんの長編連作ものでありました。しかもかなりの名著...。《トホホ...。もう正ちゃんの長編の読み残しは無いものとの私の思い込みが敗因でした。》当然の事ながら後半の結論を既に知りながら読み進める重いハンデを背負う事になりましたが、結果は予想に反して流石は正ちゃんと言えるもので、むしろ前回読んだ後半の話の筋よりも本作の方がワクワクする素晴らしい作品で楽しめました。皆さんにオススメします。2015/07/23
i-miya
63
2013.12.06(12/06)(つづき)池波正太郎著。 12/04 (p171) 大久保に、わかった、西郷は、最後まで生き残り、出世しようとか、名誉を得ようとかそんな気は、微塵もない、ことにあたり、計算をしない。 おれには、こんなまねはできない。 久光公は先代様(斉彬)とは器量が違う。 何事にも慎重すぎてことを運ぶ力はない。 島津、兵庫到着、久光のいかり、頂点に。 吉之助を鹿児島へ戻せ。 いずれ、罪状を定める。 六月、西郷は徳之島へ流され、村田新八鬼界ヶ島に流罪、森山新蔵は自殺した。 2013/12/06
タツ フカガワ
59
薩摩藩の貧乏郷士の家に生まれ、城下武士から“唐芋侍”と蔑まれた中村半次郎、後の初代陸軍少将桐野利秋の一代記。畑仕事を続ける日々のなかで鬱屈を抱える半次郎25歳の日常が、西郷吉之助との出会いでがらりと変わる。“人斬り”という剣呑な二つ名を持ちながら、池波さんが創り上げた半次郎という人懐こいキャラクターがとにかく魅力的で、読み始めたら一気に引き込まれました。3年後、京で名を知られるようになった半次郎だが、公武合体から倒幕へと薩摩藩が舵を切り替えたところで下巻へ。2023/06/04
ともくん
59
人斬り半次郎として恐れられた、中村半次郎。 西郷吉之助との出会いが、半次郎の人生を変えることになる。 剣客としての半次郎は、知っていた。 だが、本書を通じて、人となりなど初めて知ることの方が多かった。 ここまでは、前半生。 後半生で、どのように成長していくのか楽しみだ。2020/06/24