内容説明
関ヶ原の折の屈辱を忘れかねる徳川秀忠は、家康が死去するとただちに信之の真田藩に襲いかかった。秀忠は、信之の側近に送り込んだ隠密を使い、冬の陣の直後に幸村と密会した事実を突いて取潰しに追込もうとするが、ただ一人生き残った草の者お江の活躍で信之は難をまぬがれる。そんなある日、上田城に向井佐助の最期を見とった摂津の農夫が遺品を届けに現われる…。全十二巻完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
131
全12巻読了。時に立ち向かい、時に堪え忍ぶ。小土豪から身を興し、戦乱の世を生き抜いた真田家の長い長い物語もついに終焉です。家康亡き後、真田に牙をむく幕府。対して静かに超然と対峙する信之。草の者お江も暗躍するこのくだりは終幕の近さを感じさせるカタルシス漂いながらも溢れ出るエンタメ感になお惹き付けられます。…無念のうちに逝った昌幸、華やかに散った幸村、背負い続けた信之。皆、若き時代を躍動し、老いていく死んでいく。佐平次も佐助もお江も、秀吉も家康も。英雄も名もなき者も生を全うした真田太平記、了。感無量です。2021/08/14
優希
116
最終巻です。大坂の陣が終わり、真田家の歴史もひとつの終わりを告げ、信之による新たな真田が始まる物語でもありました。徳川側についたとはいえ、真田という一族への想いは、昌幸・幸村と同じだったと思います。2人が亡くなった今、その遺志を継ぐのは信之しかいないでしょう。秀忠による真田潰しの目論みも切り抜け、真田の名を守った信之。武田、織田、豊臣の激動の時代を経て、徳川の時代へと流れる中で、違う立場で駆け抜けた幸村と信之がいたからこそ、真田は歴史を生き抜くことができたのだと思いました。2016/11/09
伊田林 浮刄
110
★★★★★「お江」「あい」「読み終えたぞ」「すりゃ、まことで」「まことじゃ」「恐れ入りまいた。してご感想は」「さればよ人の生き死には斯く有るべし。そんなことを教わったような気がしたわ」「いかさま」「これ以上は語り尽くせぬ故これくらいで勘弁せよと読メの者共に伝えてくれ」「心得まいた」「お江…最後のお前の大仕事まことにGJであった」あふれる泪を拭おうともせずお江は両手をついた…夏からの暑気もようやく消え果て居間に面した奥庭にも秋の夕暮れがひたひたと寄せてきた。さして数寄も凝らさぬ庭の何処かより秋茜が飛び去った2016/10/09
シン
105
2014年5月3日により途中他の作品を読みながらも断念することなく2年少々全12巻読了いたしました。長かったー!でも読み飽きさせることなく間があいてもすぐ本線復帰できるのは作者池波正太郎が変に脚色することなく、緻密な整合性を持たせ、具体的な描写でつらぬく姿勢を常に持ち続けていたからだと思います。前巻で幸村も亡くなり、この物語はどうなるのかと思いましたが、徳川方で本筋から外れぎみにいた長男信之を主人公に描き、見事最後を締めくくりました。まだまだ未読の池波作品読があるのでこれからも読んでいきたいと思います。2016/05/12
財布にジャック
87
昨年10月に初めて1巻を手に取った時から、真田家の行く末は史実なので知っていましたが、最終巻のこの巻も、幸村亡き後でも、真田の家を守りぬいた信之の素晴らしさが滲み出ていて、最後の最後まで素晴らしかったです。この巻のクライマックスは何と言っても佐助の最期を見取った農夫が遺品を届けにくるシーンです。そこでは真田家の為に命を賭けた沢山の武将や草の者達の顔が次々に浮かびあがり、今までの11巻までの内容を思い出して胸が詰まりました。いつか真田太平記がNHK大河ドラマになりますように、しっかり署名もしました。2011/06/25