内容説明
長崎・丸山遊里の芸者愛八が初めて本当の恋をしたのは、長崎学の確立を目指す研究者・古賀十二郎だった。「な、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探して歩かんね」。古賀の破産を契機に長崎の古い歌を求めて苦難の道を歩み始める二人と、忘れられた名曲「長崎ぶらぶら節」との出会い。そして、父親のいない貧しい少女・お雪をはじめ人々に捧げた愛八の無償の愛を描いた、第122回直木賞受賞作。
著者等紹介
なかにし礼[ナカニシレイ]
1938(昭和13)年、中国黒龍江省牡丹江市生れ。立教大学文学部仏文科卒業。シャンソンの訳詞家を経て、作詞家に。「石狩挽歌」「時には娼婦のように」他多くのヒット曲を生み「天使の誘惑」「今日でお別れ」「北酒場」で日本レコード大賞を3回受賞。他にも同作詩賞2回、ゴールデンアロー賞、日本作詩大賞など受賞歴多数。クラシック界にも活動の場を広げ、オペラ「ワカヒメ」「静と義経」、オラトリオ「ヤマトタケル」、世界劇「眠り王」「源氏物語」などの作品がある。’99(平成11)年、『兄弟』を発表して小説家に。2000年、『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞
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感想・レビュー
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うののささら
100
長崎丸山町の料亭花月といえば坂本龍馬だが直木賞作品の舞台になっているとは知らなかった。歴史もそうだが文書に記録されないものは消えて無くなってしまう。長崎の歌を記録に残そうと立ち上がる芸者と学者の老いらくの恋。人生に一筋の光明を与える行動が魂を動かし燃え上がり霊気となって天を動かし素晴らしい閃き出会いがかなっていく。明治時代の長崎の風景や文化がみえてよかったです。2021/04/19
遥かなる想い
83
芸者愛八と、長崎学の確立を目指す研究者・古賀十二郎との愛を描いた本書を今ごろになって読んだ。正直描きこみが足りない感じがする。愛八の無償の愛を描きたかったのだとは思うが。2010/05/07
hit4papa
68
長崎の芸者愛八の人生をつづた作品。作詞家として名を成した著者だけに、歌への情熱が迸るような文章です。愛八が初めて愛したのは、市井の研究者の古賀。金に不自由な古賀は、愛八に長崎の古い歌を探そうと持ちかけます。愛八は無償の愛の人。自身が苦難に陥っても人の不幸を引き受けます。どん底にあっても唄の才能は衰えることを知りません。孤独を引きずりながらの女丈夫ぶりが本作品の見所でしょう。タイトルの意味は、二人が巡り合った忘れ去られた名曲です。愛八は実在した女性であり、歌声はレコードで聴くことができます。2021/01/06
優希
62
面白かったです。長崎の恋歌と一途な恋に身を任せる感覚が心地よい。方言になじめなかったのですが、読み進めていくうちに気にならなくなりました。自分の想いにひたすら生きた愛八が愛しかったです。2023/01/13
優希
57
第122回直木賞受賞作。長崎の歌恋が新鮮です。方言に戸惑いを感じましたが、すぐに物語に引き込まれました。愛八の生き様が格好良い。自分の想いに一途に生き切ったように思えます。面白かったです。2022/03/26