内容説明
戦国時代の混沌の中から「覇王の家」を築き上げた家康の、勝者の条件とはいったい何だったのか…。小牧・長久手の戦いで、時の覇者秀吉を事実上破った徳川家康。その原動力は、三河武士団という忠誠心の異常に強い集団の存在にあった。信長や秀吉とは異なる家康の捕らえがたい性格を、三河の風土の中に探り、徳川三百年の精神的支柱を明かしつつ、日本人の民族性の謎にまで迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
197
物語の速度は、突如スローモーションに陥ったかのように緩やかに進行する。下巻のほとんどすべてを費やして、小牧長久手合戦が描かれる。上巻で幼少から四十余年、前半生を描いたのとは対照的だ。秀吉vs.家康。あるいはこの合戦こそが、天下分け目の大戦さであったかもしれない。双方相睨み合い、活動に乏しいこの合戦にあって、僅かな運動と、裡で巻き起こる夥しい駆け引きが、緩急自在に活写される。ときに戦場へ叩き込まれ、結果を知っているのにじりじり消耗させられる。その臨場感たるや!司馬さんの描く後半生の家康もまた読みたくなった。2023/07/09
ehirano1
174
家康を初めとした三河衆が約270年間もの長きに渡り日本を統治した結果、良くも悪くも三河衆の質が昭和まで色濃く残り、日本人の特徴を表わすに至っていたのは大変興味深いと思いました。この意味で、家康ではなく信長(尾張)もしくは秀吉(尾張?)が約270年間もの長きに渡り日本を統治した場合、尾張衆の質がその後の日本人気質にどのような影響を及ぼすのだろうかと、感慨にふけりました。2023/12/17
Die-Go
170
徳川家康の半生について描く。下巻はほとんどが、小牧・長久手の戦いとその事後処理で、そこから一気に家康の死までが描かれている。この物語は家康本人はあまり魅力的には描かれておらず、個性的な徳川方の緒将のあり方や戦後の家康の緒将に対する処遇の仕方に興味を牽かれた。★★★☆☆2016/06/26
ykmmr (^_^)
168
言うまでもないが、本当にロマンや国を盛り立てようとするような、大きな向上心はまるでない。ただただ、現実的で『安定』を同志の三河武士たちと求め、作り上げた。あまり書かれていなくて残念であったが、関ヶ原→大坂の陣で悲願達成。そして、秀忠→約260年の歴史が生まれる。彼が秀吉の命で、江戸に来た時から幕府の礎と『東京』と言う土地がスタートした訳だが、今の東京も、日本人も良くも悪くも、家康の願に絆されている。2022/01/10
納間田 圭
125
下巻は小牧長久手の戦から。この戦いを…これほどしっかり描いた本は僕は初めて。絶好調の関白秀吉軍を下した一部始終が語られている。そこには…徳川幕府が300年近く存続できることになった要素も隠されていた。それは…家康さんの性格と物事に対する準備と考え方。そして支える家康さんの摩訶の集団”三河の衆”の存在が…大きい。彼らは異常なほどの忠誠心を持ち、辛抱強い。また新し物嫌いで…排他的でもあった。それと徳川軍は…徹底的に武田信玄さんの戦略や軍法を参考にしていた。家康さんは…信玄さんをとても実は尊敬していたらしい2023/05/27