新潮文庫<br> 砂の上の植物群 (改版)

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新潮文庫
砂の上の植物群 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 259p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101143033
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

常識を越えることによって獲得される人間の性の充足! 性全体の様態を豊かに描いて、現代人の孤独感と、生命の充実感をさぐる。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

372
タイトルはパウル・クレーの絵から。小説中にも何ヵ所かクレーに言及するところがあるが、吉行の思考がクレーのそれに寄り添い、作家の内部にある共感が再確認されるのであろう。小説を書きつつある作家と、小説内の主人公の伊木は客観と主観とが交錯したところにいる。37歳の伊木にはそれなりの過去もあるが、未来はどうやら閉ざされている。したがって彼は過去を引きずりつつ、現在時を生きる。そんな彼にとっての現在とは"性"に他ならない。それのみが不確かであり、故に生を確かめることができるからである。2020/12/16

134
読みながらその愛情も充実感も感じられない性描写と主人公の孤独感と渇きに、『砂の上の植物群』とはなんて秀逸なタイトルだろうと思った。女性達との秘め事には官能よりむしろ冷めた気持ちを強く感じ、亡くなった父親の年齢を超えてしまった主人公の、父への攻撃的な複雑な想いのほうに少しだけ理解できるものがある。ちなみに本文中に登場する「塔」とは、まだ当時完成して間もない頃の東京タワーだろうし、おそらくエレベーターのことを指すであろう「昇降機」といった呼び方が昭和40年代前半の文学といった香りがして良かった。2014/04/05

新地学@児童書病発動中

110
吉行淳之介の代表作の一つ。化粧品のセールスマン伊木一郎は18歳の津上明子とふとしたきっかけで身体を重ねてから、倒錯した性愛の世界にのめりこんでいく。際どいことが描かれているが扇情的ではなく、吉行氏独特の繊細で詩的な文章に引き込まれる。男性と女性の間には、決して埋めることができない裂け目が広がっていることが表現されており、現代人の孤独の深さに読み手は寂寞とした想いを抱いてしまう。父の影響から逃れようともがく主人公の姿も印象的だった。2014/07/13

双海(ふたみ)

29
この作品の底には静かな小川が流れています。まるで一篇の詩のよう。貪婪に瞳を輝かせながら「縛って頂戴」と叫ぶ京子・・・私はこの手の女性に巡り会ったことがないので何とも想像しづらいですねぇ。ところどころ出てくる朱唇の描写に心ときめく。うつくしい唇は濡れていなくちゃいけない、改めてそう思いました・・・無論これは女性性器のメタファーなんだけれど。2015/05/24

メタボン

28
☆☆☆☆ 鷲掴みにされた京子の乳房から迸る乳汁、和服の紐で縛られ恍惚の状態となった姉京子の姿を見せられる明子、その明子に強引に口紅を塗る一郎(明子の口紅は作品全編にわたって少女と女性の境界を示す隠喩となっている)。旅館の一室で3人の男の前にさらけ出される女の裸体の凄まじくも官能的な表現。そして一郎の京子に対する近親相姦妄想。題材のいかがわしさに関わらず、その手前で上品な官能性やどうしようもない孤独を感じさせるのは、吉行の詩的な文体が為せるものなのだろう。再読するとまた違った感覚を感じられそうな良作だった。2018/09/23

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