内容説明
日露戦争で父を亡くした誠太郎の上に、やがて同じ兵役の義務が重くのしかかる。その年、大正7年―富山県で火を噴いた米騒動は、たちまち大阪に飛び火した。群衆と警官が、竹槍隊と兵隊がもみあう激しい渦巻のまっただなかで、誠太郎が働く大阪の米屋もまた群衆にとり囲まれる。故郷小森も大阪も、さわがしい時代の波の中に過ぎてゆくこの年、親しい人々に送られて誠太郎は入営する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
151
青年になった誠太郎・孝二の物語である。 結婚に悩む 誠太郎の心情が痛々しい。 部落差別が残る 大正の米騒動を背景に 若者たちの成長を描く …杉本まちえが 先生となり、誠太郎が 兵役へ …時代が動く予感がする巻だった。2020/06/02
レアル
70
兄誠太郎の縁談話に自分の出生地を相手に打ち明けられない自分への情けなさ、そして相手も同じあったと知って驚愕。共に同じ悩みを打ち明けられずにいるのだ。一方、弟孝二は今まで言われるがまま差別を受け入れるしかなかった幼き子どもから、差別自体を無くす事ができないのか!と思案し始めるようにまで成長。その他時代背景に米騒動が描かれていた。大塩の乱やその当時の政治背景など、この兄弟からだけでなく、時代背景から被差別部落を見るという視点も読んでて勉強になる。そしてとうとう兄誠太郎が戦争に行く事となる。。2015/04/13
TATA
37
時代は進み、米騒動が発生。米価の異常な高騰が最底辺の人々の生活をいかに苦しめたか。そして誠太郎は甲種合格し入営へ。ハルピンで待つであろう過酷な日々を前にほんの一時の帰郷。見送る母、旅立つ子。いつの時代であっても胸を打つものだと。2019/08/03
James Hayashi
26
大正時代の米価高騰から米騒動に至った時代背景。米屋に務める誠太郎をメインに綴られている。食うのにも困っている貧しき人たちが主食(粥がメインだが)を欠き、行き詰まっていく様子が詳細に語られている。戦後ということもあり、物価高騰、都市流民で農民不在が米価高騰に結びついたようだ。次巻へ。2020/11/18
湖都
14
シベリア出兵、米騒動という歴史の流れに誠太郎と孝二も巻き込まれていく。その中で持ち上がる誠太郎の縁談と兵役。誠太郎の成長と離別が嬉しくも悲しくもある3巻だ。小森の人たちが竹槍で決起しそうなシーンや、大阪の米騒動のシーンではどきどきした。そして、ぬいとふでの変わらぬ良好な嫁姑関係や、小森の人々の家族同然の付き合い(夕飯をご馳走しそのお礼に片付けをしてもらう)や、子供の時からの変わらぬ友情などの描写を読むと、エタを嘆く人々よりも現代の人間の方が貧しい人間関係の中で生きているのではないかと考えてしまう。2018/06/06