内容説明
二の矢を携えず、ただ一矢のみを持って真剣勝負に臨む侍の姿を通し、武士道の真髄を描いた表題作。従妹の許婚の悪行を知らされると同時に、従妹への恋情に目覚める「怒る新一郎」ほか「千代紙行灯」「武道絵手本」など。大正15年の「小さいミケル」から、昭和18年「日本婦道記」が直木賞に推されてこれを辞退した時期までの苦行時代を、新たに発掘された11編を含め跡づける短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
24
おりしも周五郎の青春時代をばらす一冊を読んでいたので、この作品の持つ味の含みを楽しめた。彼は「焼却してほしい」と周囲に言っていた時期と作品群などがあったのだ。片思いするほど彼の作品にのめり、人生のこの時期に読み返し始めると私には至福の感慨。とはいえ、完成された彼の作品が脳底にあるだけに「?」という違和。正直、青っぽ過ぎて筋を追うのにガクガク。子供の時分に読んだ「神州天馬峡」や西条八十の子供向け短編を彷彿とさせる(兄たちの本)現代ものは「館、怪人、○○の鬼」などよくあったモチーフが。2014/01/23
タイガー@津軽衆
5
通算38冊、6月7冊目読了。山本周五郎の戦前、戦中、戦後の作品が収めらており、戦前のは山本自身あまり気に入っていない作品らしいです。確かにいつもの感じではないなって思いながら読んでいました。山本周五郎は現代ものより時代物がやはりよいと再認識しました。2018/06/29
タツ フカガワ
4
6年ぶりに再読。現代ものと時代ものの短編17作を収録。現代もののなかには少女小説や少年探偵小説もあって、周五郎の意外な一面を見るようで楽しい。しかし何といっても「怒らぬ慶之助」「雪崩」「紀伊快男児」「怒る新一郎」などで気持ちのいい涙を流すと、ついついまた周五郎の本に手が伸びてしまいます。2016/11/04
lastsamurai
4
短編に涙する、他の書籍に興味がわかず、止まらぬ周五郎の作品。 時代作品の合間に現代作品の短編があるが、これはいまひとつ。2015/07/10
オールド・ボリシェビク
3
短編17作を収録。作家としての最初期のものも含まれていて、そのれは技術的には確かに未熟なのだが、それゆえのほとばしる情熱のようなものもも感じられて面白いのだ。でも、現代ものはつまらないな。特に、少年向けに書かれた探偵小説は首をひねらざるを得ない。いずれにせよ、山本周五郎が、予定調和的な、講談でも用が足りるような小説をいかに文学へと昇華させていったか。その足跡をたどる面白さがあるといったところか。2023/06/15