内容説明
あの頃、戦争は日と共に、錯乱と惰性と狂気とを産んでいた。太平洋戦争末期、死と隣り合わせの日々のなかで、少年は早熟で愛らしい少女と出会う。ギリシャ神話に惹かれる少女から『ダフニスとクロエー』を贈られた少年は、その神話的世界をなぞるように、清純で牧歌的な愛をはぐくむ。二人は信州の大自然のなかで結ばれたが…。幻の処女作を四十年ぶりに完成した瑞々しい長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
21
「ダフニスとクロエー」というと、三島由紀夫「潮騒」のほかに本書が思い浮かぶ。再読。「もし空襲があっても、あたしは死なないわ。あなたに会うために」北さんの筆致は、瑞々しい。そこはかとなく漂うペーソス。そして、物語のすべてを象徴する題名。クロエーはまだ生きている、そう信じたい。 ※大木惇夫の詩が引用されていることに気が付いた。2017/07/29
双海(ふたみ)
10
本土決戦が叫ばれ、明日死ぬともわからない状況であっても、いや、だからこそ現実とはおよそかけ離れた甘美な幻想に浸ることができるのかもしれない・・・。2014/01/14
かりんとー
4
戦争の話です。
ソングライン
3
空襲の始まった東京で出会った少年と少女は、疎開先の信州で再会し、ギリシャ神話のダフネスとクロエになりきり結ばれます。ままごとのようですが、二人の純粋な愛に胸が締め付けられました。2017/04/25
ender-san
3
北杜夫ファンでよかったなーと思える本でした。