内容説明
荒涼たる世界と人間の魂に、水滴をそそぐ「雨の木」。優雅で荘厳な現代の黙示録。
目次
頭のいい「雨の木」
「雨の木」を聴く女たち
「雨の木」の首吊り男
さかさまに立つ「雨の木」
泳ぐ男―水のなかの「雨の木」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
278
「雨の木」を共通のメタファーとして書かれた5つの連作短編集。全体として長編小説「雨の木を聴く女たち」を構成していると言えなくもないが、最後の「泳ぐ男」は他とは異質な感が否めない。5つの小説は時系列に並べられ、この時期(1982年)の大江自身の行動や体験と概ねは重なるのだが、アクチュアルなものとフィクショナルなものが、意識的に混淆される小説作方をとっている。したがって、読者の中にこの一連の物語を大江の私小説として読むかもしれない。そして、おそらく大江はそのことも重々承知した上で小説を仮構しているのだろう。2013/02/19
遥かなる想い
91
ある意味、大江健三郎らしい作品。「雨の木」のイメージを全編に意識させながら、描いているが、ストーリー的には、やはりよくわからなかった。 「読売文学賞受賞」の名作らしいのだが。2010/06/19
Vakira
47
文庫カバー裏の解説には「『雨の木』のイメージは荒涼たる人間世界への再生合図である。」とある。メタファー(暗喩)として「雨の木」を表現するのであれば、そのメタファーの元が存在するはずだ。「雨の木」とは何か?夜中に雨が降ると翌日、普通の木はすぐ乾いてしまうのにこの木は葉に水滴をため込んで翌日まで雨を降らす。タイミングをずらして恵みの雨を継続する木。しかし雨とは生命維持に必要なものだが、全てを濡らす、生活には些か厄介なものになったりする。時間差の恵みと時間差の厄介事。過去の事実と時間差で出現するの現在の厄介。2019/03/24
Gotoran
45
宇宙の木でもあれば、現実の木でもある「雨の木」をメタファーとして書かれた5編の連作短編集。小説家の中年男が語り手の私小説的な叙述が垣間見られる。人の死とその後に残された者たちの悲嘆が描かれている。高安カッチャンとその妻ペニー、カルロス、猪之口さんなど、個性的な登場人物たちと語り手「僕」との関係が独特で、印象に残った。 2023/04/17
ω
41
一作目「頭のいい雨の木」は雨の翌日にも小さな葉っぱに水を溜め込んだ賢いレイン・ツリーが目に浮かび、精神障害者たちのラストに向かって疾走感があった! 二〜四作目では高安カッチャンとその奥さんもキャラがよく立っていて今も思い出せる。でも難しい。 最後の「泳ぐ男」は大江自身もゴニョゴニョ言ってるように、他のものとは離れた刺激的な創作って感じだけどコレが一番好きww2024/04/29
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- 和書
- 心はあなたのもとに