内容説明
ついに大元帥の位まで登りつめた、ベルトラン・デュ・ゲクラン。国王シャルル五世との奇跡のデュオは、民衆に希望をもたらした。破竹の快進撃を続ける武将は、いつしか生ける伝説に。だが、フランスで、スペインで、強敵に打ち勝ってきた男にも、黄昏は訪れる。その日まで―、男は太陽のように、周囲を照らし続けた。不世出の軍人と彼を巡る群像を描く歴史小説、堂々の完結編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おにく
33
これまでにない戦術で戦争の常識を覆したデュ・ゲクランと、冷徹な政治手腕で内外の政策を強固にしたシャルル五世との連携で、フランスはイングランドに奪われた領土をほぼ取り戻したという。物語では、彼らを取り巻く多くの人に焦点が当てられ、様々な感情を持ちつつ、自分の役割を見出だしてゆく姿が見られます。たが、人は持ちつ持たれつで、大元帥になったゲクランは名声目的の貴族たちに囲まれ、往年の強さを失ってしまった。デュ・ゲクランは1380年没、シャルル五世もその二ヶ月後に死去。だが百年戦争の抗争の中盤でしかないという。 2022/05/22
Fondsaule
26
★★★★☆ 国王シャルルに取り立てられ、大元帥になったベルトラン・デュ・ゲクラン。民衆にも人気。ただ軍人ともなれば、理不尽な負けと分かっている戦にも行かなければならない、捕虜にもなる。でも性格は子供のまま。実際こんなだったら、周りの人間はさぞやりにくかったろう。2019/09/23
しーふぉ
24
貧乏貴族の家柄からフランス大元帥であり軍神と崇められたゲクラン。アンジュー様が…その後の歴史は知らないけれど、100年戦争がまだまだ続くということは、せっかくシャルルとゲクランのデュオで築いた優位も後継が台無しにしてしまったということなのか。2017/04/21
ヨクト
20
傑作だった。紛れもなく傑作だった。フランスの不出世の天才、戦争の風雲児ベルトラン・デュ・ゲクランの生涯を描いた物語。文面からでも溢れ出てくるベルトランの無邪気な横暴さとその彼に惹かれた個性的な者たちの共演は、フランスとイングランドの百年戦争時代を騒がしく彩る。特に上巻のベルトランがどんどん成り上がって行く姿は小気味良い。これはページ数に見合う濃密な読書だった。2017/02/17
kk
19
百年戦争中頃のフランスの傑物、ド・ゲクラン将軍一代の活躍を材に取った歴史小説。キャラ立ちヒーロの冒険譚・英雄譚としてもかなり楽しい物語です。が、作者はそれだけに終わらせることなく、主人公たちの足取りを追いながら、人が人として生きていく哀しみや寂しさの本源は何か、そしてそれでも人が自らの生を支え、価値あるものを追っていこうとできるのは何故なのか、そんなことにも思い致そうとしているように感じられました。いまさらですが、佐藤賢一先生、ほんとに只者ではないですね。2021/05/25