出版社内容情報
吃るため人とうまく接することが出来ず、人間よりも動物を愛し、日本猿の餌づけに一身を捧げる男の純朴でひたむきな生き方を描く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
51
宗教色のない周作先生の作品でした。ドモリで気弱な一平が愛したのが人間よりも動物というのがうなずけます。野生の日本猿の調査に一身を捧げる決意をしますが、そこには大きな壁があったのですね。弱くて純朴な人の生き方を描いた感動作だと思います。2021/05/07
ピチャ
29
人との関わりが苦手で動物と関わるようになった一平。一平が猿の研究を続けていると、加納という観光会社の専務が現れる。猿をめぐって対立する二人に、昔の友人(?)朋子が関わるようになっていって…。 純粋で不器用な男と、平凡で慎重な男とその妻、強い男、様々な人間が書かれた作品。猿の行動や心理も詳しく書かれていて面白い。特に猿と打ち解けるよう一平が歩み寄っていく姿が印象的だ。 必ずしも全てハッピーとはいかない展開が、心を動かす。人間の複雑な心に私は泣いた。2020/08/04
n.k
16
言葉が不自由なために、発語せぬ動物たちへの愛着を深めた男。不器用で愚直な性格が魅力的。「猿の群れをありのまま保護したい」という主張のわりには、人の手で餌場作ったりボス争いに横槍入れたりしていて大丈夫??となったが…それでも金儲け主義者たちの仕掛ける罠や猟犬や麻酔銃から、身を挺して猿を守る姿はカッコよかった。あとは女性の幸せについても考えさせられる。弱気な男に強さ求め、結局強引な男に惹かれてしまう朋子へ。女心を知ってて弄ぶ奴よりは、女心わかってないくらいの男の方がいいと思うよ!2024/02/07
501
16
心染みる物語。どもりのコンプレックスため上手く人間関係を築けず動物へ親和を抱き、日本猿の研究の道を歩む。人間相手だと怖じ気付くが、猿の話となれば資本に流される研究所に抗い、研究目的の捕獲から猿を守るため、芯の通った行動を見せる。彼がこの道を見いだしたのも、学生時代に幼なじみの「弱虫」という励ましがあり、音楽の先生の後押しがあったからこそでもある。人間関係から逃げてきた彼だが、他人に人生は支えられている。一方、他人の意志に流されるままになる幼なじみもいる。この対比が著者の目の厳しさを感じる。2016/09/17
みっちゃん
16
高校生のころに読んだ黄ばんだ本をずっと近くに置いていたのは、きっと感動した本なのでしょう。また読もうと思っていたのでしょう。あのころの私に理解できていたのか疑問でしたが、タイトルの「彼の生きかた」まさしく彼だけができる生きかたです。愚直に一途にまっすぐに、そんな生きかたをしてみたいと思っていたのかな。 2016/02/14