内容説明
取りつき点から頂上まで1800メートルの巨大な垂直の壁に挑んだ2人の日本人登山家の実名小説『アイガー北壁』。2人のパーティーが白馬岳主稜で吹雪にあい、岩稜から姿を消す『気象遭難』。冬期の富士山で、不吉な予測が事実に変って主人公の観測所員が滑落死する『殉職』。他にヨーロッパ・アルプスを舞台にした『オデットという女』『ホテル氷河にて』など、山岳短編の傑作全14編を収録する。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
1912(明治45)年、長野県上諏訪生れ。無線電信講習所を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。’56(昭和31)年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、’74年『武田信玄』等で吉川英治賞を受ける。’80年、心筋梗塞で急逝。没後、その遺志により新田次郎文学賞が設けられた
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感想・レビュー
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あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
110
久しぶりに読む新田作品は、山にかかわる14の短編集。個人的には、短い文章では語り尽くせないような登場人物の深奥に触れることができる長編が好みだが、短編集なりのバラエティーに富んだ内容を楽しむことはできた。死と隣り合わせのギリギリの状況に自らを賭けてみたいからなのか、それを克服して得られるものが何物にも代えがたいものだからなのか。山に魅了された人々、自分にはないものだけに山岳小説の魅力は尽きない。2019/10/14
大阪魂
57
たいてい山での遭難がテーマのんばっかしの短編集!そんなんが14もあるからちょっとおなかいっぱい(;´▽`A``でも話ごとに設定もちゃうし、新田さんらしないコミカルなんとかちょっとエロいのんもあったりして目先かわったから一気読みできた思う!一番はやっぱ「アイガー北壁」!1800mもある岩壁を日本人2人のパーティが数日かけて登るんやけどあと300mのとこで事故、一人は登頂したんやけど一人は…実話、実名での悲劇、絶対岩壁登るのは無理ってあらためておもた!でもますます山には惹かれたかな、夏にはどっか登りたいー!2021/06/08
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
52
取りつき点から頂上まで1800メートルの巨大な垂直の壁がそそり立つアイガー北壁。ここに挑んだ2人の日本人登山家の実名小説『アイガー北壁』。2人のパーティーが白馬岳主稜で吹雪にあい、岩稜から姿を消す『気象遭難』。冬期の富士山で、不吉な予測が事実に変って主人公の観測所員が滑落死する『殉職』。など、山岳短編集全14編。やはり表題のアイガー北壁が良い。★★★
goro@80.7
47
遭難に遭いながらも何とかしようと足掻く「万太郎谷遭難」や「凍った霧の夜に」がお気に入り。「涸沢山荘にて」はちょっと異色でしょうが、ラケットじゃなくてトレッキングポールを忘れずに持っていこう。2017/03/05
NADIA
45
14編の山岳短編小説。タイトルの『アイガー北壁』と『気象遭難』の二編も印象深いが、私が一番面白く感じたのは、結末の意外性が鮮やかだった『殉職』だ。ところで、女性登場人物が皆、昭和中期的テンプレで違和感しか感じない。男性登場人物の足を引っ張るような迷惑な存在か、さもなくば絵にかいたような良妻賢母型とか。男性目線固定は昭和の作品にありがちなのはよくあることだが(笑) でも山岳遭難ものとして、とても読みやすく面白いかな。 2022/07/17