新潮文庫<br> 婚約

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新潮文庫
婚約

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  • サイズ 文庫判
  • 商品コード 9784101113012
  • Cコード C0193

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

176
比較的初期の作品を3篇収録。まず巻頭の「鷲になった少年」だが、これはきわめてエロティックな小説。倉橋の表現も巧みな比喩を駆使しながらなめらかに進む。表題作の「婚約」は倉橋自身がカフカによったと「おことわり」を述べるまでもなく、ほとんど小説の冒頭からカフカ的世界(特にいえば『城』)が展開する。また、作中にもヒントのごとく『城』や『変身』が現れるが倉橋の読者には無用だろう。もっとも、著者は剽窃との誤解を恐れたのだろうが。「どこにもない場所」は、やや難解。小説をもって小説世界―どこにもない場所―を語るのだから。2015/01/06

メタボン

25
☆☆☆☆ 家庭教師の代役から少年と性的関係に陥るL、そして婚約者のS、この3人の関係に悲劇が訪れる「鷲になった少年」。F・Bとの婚約、その代理人、喧嘩が日常の目的のマックス、父であるH・K、さまざまな関係性が出現する中、ラストのミレナによりもたらされる死が衝撃的な「婚約」。狂人の母、そして実は自らも精神病であったLの自殺「どこにもない場所」。いずれも一筋縄でいかない観念的な作品であるが、共通なのは主人公の死で幕が閉じること。異様な読後感に包まれた。カミュ・サルトル・カフカの影響と解説にあった。2019/05/19

あ げ こ

4
『どこにもない場所』Lと他者を遮る隔たりの存在。他者に抱くLの認識。Lに触れた他者の反応。描かれたLと他者の様相を見る限り、両者の関係は、一冊の書物とその書物を読む者の関係性に似ている。願望を体現しようとするLは、彼女自身が一つの作品であるかのよう。理解出来ぬ者、誤読する者、見下す者、Lの現し身に惹かれる者…彼女とは決して交わる事の無い世界に存在する者達。唯一彼女を理解する者だけが、共犯者の微笑を浮かべる事が出来る。自分は作品との間に存在する隔たりの前に、ただ呆然と眺めるだけの無力な読者であったと思う。2013/10/23

sabosashi

4
 カフカへの愛着に充ちみちた作品。カフカの世界の箱庭が描かれる。各人物との緊張関係がかなりリアルに巧みに語られる。倉橋流の書くことの意味がさいごにはにじみ出てくる。カフカの孤高さを描けば描くほど戯画的な意味合いが出てきてしまうという矛盾があり、だからこそ笑いながらカフカを読むことが可能なり。はたしてそれがカフカの本意であったかわからないが。望むらくは、カフカがすべて書き記したものを残し、後世のひとにまるごとのトラウマを巣食わせてほしかった。地獄は自分のなかにしかないなどと思ってほしくなかった。2012/11/11

rinakko

3
再読。2017/03/31

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