出版社内容情報
四国の県警捜査一課長香春銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件”の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
matsu04
35
推理小説長編。これは面白い。思わぬ展開に唸らされる。終盤に向けて捜査が一気に進展していく。凄い迫力だ。エンディングも良い。さすがである。2020/12/21
エドワード
34
九州の素人作家が同人誌に掲載した作品の文章が、四国のある殺人事件の現場を的確に描写していた。訪れたことも見たことも無い場所をここまで描けるものか?盗用の仮説を立てる警察は、捜査の末、ある著名な作家が四国と九州の両方の現場を訪れていた事実にたどりつく。素人作家と著名な作家を結ぶ、旅館の女中。彼女の行方は…。漁港、鄙びた旅館、駅、バスドライブ。山と海岸線が目に浮かぶような、日本の原風景が松本清張ならではの郷愁を誘う。徹底的に隠したはずの計画が、偶然の出来事から全て裏目に出る。これもまた、因果応報の物語だ。2018/08/29
kai
29
何十年振りの松本清張。頁の隅々から作品の風景がくっきりと見える。昨今の軽いジョークが入る場面は全くなしで、ラストまで続く緊迫感と簡潔な文章に入りから結まで真剣に読みこんだ。刑事コロンボのような倒叙物での展開は氏の作品では初めてだったが時代が変わってもスリル満点だった。当代の超人気作家だった松本清張の凄さ、鋭さを体感した。ハマりそうな気配がする。2017/01/27
さきん
27
初松本清張。盗作した小説の中身に殺人事件解決の糸口があったというものの盗作した本人もまた違う殺人事件を起こしており、フィクションしすぎていて面白いとは思えなかった。佐賀坊津の言葉はかわいらしくていいなと思った。2018/11/25
きのぴ
25
文芸雑誌で紹介された小説の一部分から、だんだんと真相に近づいていく様子にぞくぞくしました。捜査の網を徐々に徐々に絞っていって最後犯人に辿り着くというミステリー、松本清張とても上手いですよね。2020/01/29