内容説明
次郎は孤独な子だった。生後間もなく里子に出されたため、生家に戻ってからも、母、祖母に疎まれ、兄や弟となじむことができなかった。ひねくれ、反抗的になりがちな次郎を支えてくれるのは父の俊亮だけだった。が、一家は没落。さらに、母の死、父の再婚、中学受験の失敗…と、次郎の周囲には、大きな変化が待ちかまえていた。自伝的要素を交えて一人の少年の生き方を描く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
49
小説家であり、教育者でもあった下村湖人(しもむらこじん)の自伝的教養小説です。日本の代表的な教養小説『路傍の石』と同様、残念なことに未完です。五十二歳から書き始め、七十歳になるまで書き続けました。しかし、学生時代から構想は既に有り、帝大生時代に一度書こうとしましたが、『小説的技巧未熟のため失敗』します。タイトル『次郎物語』からも分かる通り、次男という微妙な立場に置かれ、さらに里子に出されたことから何かとひねくれた思考を持つことになった次郎は、今後どのように成長していくのか…。中巻へ。2016/07/08
ビイーン
32
古典文学の名作というだけあって、なるほど処々に作者の人生訓が見られ、色々と考えさせられた。幼き頃に里子に出された次郎が実家に連れ戻らされ、家族関係で様々な葛藤をしながらも逞しく成長していく。里子に出されて可哀そうと私は思ってしまうが、これは昔の風習であり武家の子供への教育方法としては一般的なのだそうだ。現代日本では考えられない風習である。とても興味深く思う。2023/01/10
まーみーよー
26
再読。やはり名作。小学生の時に読んだ本の中で一番印象に残っていたと記憶しているのだが、内容は全く忘れていた。主人公本田次郎の物語の上巻は第一部、第二部。出生から中学入学まで。生まれてすぐに乳母の元で育てられ、実の母の愛を次郎の求める形では得られずに育った次郎。六歳で実家に戻って生活することになったが、周りの大人が手を焼くことばかりだ。そんな彼も周りの影響や彼自身の気づきにより人間として成長してゆく。幼年期、少年期の細やかな心情が描かれていて引き込まれる。次郎の兄の恭一も真っ直ぐだ。付箋がいっぱいだ。2020/09/23
ももたろう
21
平成の終わりに読む本が、期せずして自分が最も愛する本になった。7年ぶりの再読である。この作品は、心の奥深くを温めてくれる数ある作品の中でも、群を抜いている。テーマは、運命、愛、永遠。母からの愛の枯渇ゆえに、愛されることを人一倍望んできた少年が、人を愛する人間へと変わっていく様子が、本当に美しい。夜空に輝く星の中でも、決して動くことのない北極星や、絶壁に堂々と咲き誇る一輪の蘭などの描写も、単なる風景描写ではなく、次郎の成長と深く関わっている。次巻が楽しみだ。2019/04/29
aponchan
19
中学生の頃に共感しながら読んだ記憶がある。改めて読んでみると、面白いが印象が異なる。教師や親の目線の方が関心が向く。次巻が楽しみ。2021/12/31