出版社内容情報
癌の検査・手術、泥沼の教授選、誤診裁判などを綿密にとらえ、尊厳であるべき医学界に渦巻く人間の欲望と打算を迫真の筆に描く。
内容説明
開始された医事裁判の控訴審は、原告側弁護人や里見たちの献身的努力によって、予断を許さない展開に。そして、財前自身の体に不吉な病魔の影が…。厳正であるべき“白い巨塔”大学病院の赤裸々な実態と、今日ますますその重要性を増している医事裁判に題材をとり、徹底した取材によって、人間の生命の尊厳と、二人の男の対照的生き方とを劇的に描ききった、社会派小説の金字塔。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
332
果たして財前は”悪”だったのだろうか? とても考えさせられる作品でした。今の日本の医師たちは様々な問題を抱えています。大きく分けて2つ。1つ目は『医師の残業上限』です。2016年の厚労省調査によると、病院常勤医の4割が休日を含め週60時間以上であり、法定労働時間は週40時間のため、残業は月80時間以上になる。働き方改革関連法は一般労働者の残業時間上限を「年720時間(休日を除く)」と定め、同様に規制すると地域医療が崩壊する恐れがあることなどから医師は24年4月まで規制の対象外なっている。2018/06/29
miyumiyu
134
再読。財前自身の過失を柳原医師に転嫁しようとする発言で、忍耐の堰を切ったようについに柳原が真実を証言する。その時には財前は既に病に侵されて…。裁判で真っ向対立した里見に検査を依頼し。敵対していた東前教授に全信頼で執刀を依頼する。後半は再読でもこみ上げる涙を抑えきれない。「信頼しているのは里見で、愛しているのはケイ子」の一文にまた涙。財前は郷里の母に毎月仕送りすることが楽しみなごく普通の息子であり、そしてどこまでも類い稀な優秀な外科医だった。荘厳なラストは、読後も余韻が続く。やはり心に残る作品。2016/01/25
優希
120
物語の大詰めはこういう結末へと向かったのかというものでした。控訴審と学術委員会選挙が大きなテーマとなっており、息が詰まりそうな展開です。予断を許さない方向に動く中で、財前に病魔が襲うというのは皮肉なことだと言うしかないのでしょうか。大学病院の赤裸々な実態、重要性を増す医事裁判から人間の命の尊厳を見せつけられます。財前の最期の描き方が凄い。医者として、専門医としては辛いけれど、皆が救おうとするのが印象的でした。全巻通して、社会派小説の名作だと思います。2016/10/13
抹茶モナカ
119
財前教授は学術会議選挙に当選するも、医事裁判の控訴審で敗訴する。控訴審敗訴の瞬間に財前教授は倒れ、治療不可能な癌である事が判明する。作家が社会的責任から描かれた控訴審敗訴の物語で、財前教授の最期は荘厳でもあるけれど、読んでいて面白い感じも少ない。社会的責任なんか作家に求めるから、不要なパートが作られてしまった作品。2013/12/15
ゆのん
99
最終巻。控訴審の判決も出てラストに向けての怒涛の内容。1巻から読んできて本当に憎たらしかった財前に病魔が忍び寄る。『罰が当たった』『いいきみ』となるかと思いきや壮絶な死に涙が出てくる。医者としてのそれぞれの人生や思いが2人の全く異なる医師の物語は悲しい結果で幕を閉じる。里見が言う『財前君は可哀想なやつです』という言葉が心にしみる。山崎豊子作品は巻数が多く若干躊躇するものの読み始めれば面白くあっという間であった。1182020/05/16