内容説明
マンションの一室。住んでいるのは高利貸しの亭主と占い師の夫人、そして一人娘。そこに金目当ての妙な男たちがやって来て、大騒動が持ち上がる。さらに、死後に人間にとりついてその出来事を皮肉に見守る霊魂たちもからんで…。詐欺師、強盗、霊魂たち―人間界と別次元が交錯する、軽妙なコメディー。会話主体でテンポよく展開、現代の世相と、人間の内面を映し出した異色作。
著者等紹介
星新一［ホシシンイチ］
１９２６‐１９９７。東京生れ。東京大学農学部卒。１９５７（昭和３２）年、日本最初のＳＦ同人誌「宇宙塵」の創刊に参画し、ショート・ショートという分野を開拓した。１００１編を超す作品を生み出したＳＦ作家の第一人者。ＳＦ以外にも父・星一や祖父・小金井良精とその時代を描いた伝記文学などを執筆している（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nanasi
140
巻末にあとがきが収録されています。カバーデザインとカットは真鍋 博さんです。解説は収録されていません。霊魂や亭主が金貸し，夫人が占い師などアイディアが新鮮でした。2013/10/03
新地学@児童書病発動中
131
星新一が素晴らしい作家であったことがよく分かる作品。高利貸しと占い師の夫婦のもとに、強盗たちがやってきてドタバタが起こり、皮肉な結末を迎える。劇を意識して書かれたそうだが、物語の基本的な構造はこの作者のショートショートと同じだ。皮肉な笑いに満ちており、読み手は苦笑いしながら本を閉じることになる。人間に憑りついている霊魂が出てくるところが、ファンタジックな要素で、この物語をさらに面白くしている。霊魂の世界の説明は合理的で、この作家らしい苦いユーモアを感じた。星新一は長編も巧い作家なのだ。2017/05/14
KAZOO
59
星さんにしては本当に唯一の戯曲風味の小説なのでしょう。ショートショートではなく、小説でもない珍しい感じがしました。お芝居用らしくにぎやかな登場人物がたくさんいて本当に芝居にしてもらって観たくなりました。2014/12/29
Tetchy
50
アメリカ風スラップスティックコメディを星新一が書くとは思わなかった。幽霊まで出てくるのがこの作者らしい。2008/09/05
しゅわ
47
勝手に星さん再読祭り第33弾は、とあるマンションの一室で起こる大騒動を描いた長編で、戯曲形式…という星さんにはめずらしい異色作です。そのマンションの住人家族だけでなく、それぞれに取り付いている霊魂たち、そして詐欺師や強盗…といろいろな登場人物が入り乱れる軽妙なコメディーです。星さんの長編というと、『きまぐれ指数』を思い出しますが、同じ感じかなぁ。テンポの良い会話とシュールな展開はおもしろいけど、やっぱりショートショートの方が濃縮した感じで好きです。2015/07/25
