新潮文庫<br> 埋火

新潮文庫
埋火

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  • サイズ 文庫判/ページ数 194p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101095189
  • NDC分類 913.6

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

169
昭和54年出版の短編集である。 表題作は 夫に先立たれた 中年女性の 肉のくすぶりと 倦怠をしっとりと描く。 短編集に収められている どの作品も 何かを諦めたような男女が登場するが、 その腹の座り方と 昭和の雰囲気が心地よい。 女の業のようなものを 澄んだ目で描く、 そんな短編集だった。 2018/10/12

新地学@児童書病発動中

102
傑作短篇集。どの作品も凄みを感じた。凝縮された表現で人生の陰翳を描き出している。「山水図」が一番の好みだった。私が恩師の息子に思いがけず出会って、自分の過去を振り返ることになる。そこから浮かび上がってきたのは、第二次世界大戦末期の孤独な青年の生き様だった。戦争一色の時流に乗りきれない青年が、日本の古典文化に慰めを見出して、生き抜こうとする姿に激しく心を揺さぶれた。これは作者である立原正秋の姿と重なる。彼の日記に出てくる短歌が美しい。「北山のふるきみだうに氷雨ふり歴史はうつるも山水はかはらず」2018/08/09

じいじ

22
 立原作品2作目。「花のいのち」の余韻がある裡に、また立原小説を読みたくなった。表題作を含む7短篇集。「埋火〈うずみび〉」は夫に先立たれ熟れた身体を持て余す、古美術商の女が同業の54歳の男との情事を重ねる中、骨董に眼が効く禅僧に憧れを抱いていく・・・話。私的には、肝臓がんで死んだ友人をモデルにした「水仙」が好きだ。親友の突然の死の報せを受け、旧友が鎮魂の思いを託する作品。私も今年2月に人生一番の親友を唐突な死で失った経験したので思いが重なった。地味で静謐な作品。高中年層が好む小説のような気がする。2014/11/14

なる

13
名前だけしか知らなかった作家、立原正秋の最晩年に描かれた短編が揃っており、純文学を標榜した立原正秋の集大成とも言える作品群。読み解くにはある程度の読解力が必要かもしれない。疲れた頭で読むと文章が滑ってしまう。愛人とのやり取りを思い起こす艶かしさの残る『仮の宿』や『埋火』、恩師との想いを絵と絡めて描いた『山水図』や、作家の墓の前で手紙を燃やす女性の描写が印象的な『山居記』など、密やかに胸を焼き焦がす名品が多い。中でも友人を喪ってから当時の友人たちと再会する『水仙』が好み。どこまでもまっすぐな純文学。2024/03/23

shichuan

4
BGMがない。風音であったり、足音であったりが、非常に際立つ、そんな静かな小説。日本人的な無常観があるのだけれど、今のぼくとは少し違う。共感にずれがある。このずれが意味するものが分かると、何か面白い発見になりそう。他の作品も読んでみようと思う。2013/03/19

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