新潮文庫
浅草博徒一代―アウトローが見た日本の闇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 430p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101075211
  • NDC分類 916
  • Cコード C0123

内容説明

時代は大正から昭和。移りゆく世相を背景に、浅草一帯に勢力を張った博徒が物語る愛と波乱の生涯。15歳で女を追って上京し、やくざの道に入った男が歩んだアウトロー人生。官憲の目を盗んで滑るもうろう船、足尾銅山の大反乱、恋と駆け落ち、中国国境の兵役と脱走計画、そして大空襲と艦砲射撃下の博打…。関東大震災と二度の戦争をくぐり抜けた男が見た知られざる「日本の闇」。

目次

第1章(お佳;深川 ほか)
第2章(シャケの頭;着物の兵隊 ほか)
第3章(出刃;こんにゃく踊り ほか)
第4章(豚と艦砲射撃;浜の真砂 ほか)

著者等紹介

佐賀純一[サガジュンイチ]
1941(昭和16)年茨城県生れ。慶應義塾大学医学部卒。国立栃木病院、ハワイ・クワキニ病院勤務を経て、現在土浦市で開業。’89(平成元)年、『絵と伝聞 土浦の里』で第一回日本私家本図書館賞。その英語版『Memories of Silk and Straw』はサントリー地域文化賞、国際出版文化賞、外国人記者クラブ最優秀図書賞を受賞、独語・仏語・ポーランド語版も出版され、欧米などで日本研究のテキストとして使われている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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姉勤

43
大正の群馬。自宅の離れに囲われた裁判長の妾に惚れたことを機縁に、のちに浅草を仕切るヤクザの親分になる男の話。彼女を追って東京に出た伊地知英治は、経緯から博徒にスカウトされ、数奇な人生を歩んで行く。彼の目を通した大正時代から戦後数年までの市井の景色。老い、病を得た彼を診る医者への問わず語りが、物語となる。博徒ならではの鉄火場、修羅場なシーンはほどほどに、社会保障などない、とことん貧しく、天と地ほどの格差、人々の逞しさ、そして優しさ。失われた長い歴史の中の一フェーズ。最近は美化されがちな時代の、生きた証言。2017/09/15

hitotak

14
医師である著者が、元ヤクザの親分が語る自らの生涯を書き留めた物語。博打で場を盛り上げるための方法、刑務所での看守や囚人たちとの人間関係などヤクザ稼業ならではのエピソードも興味深いが、大正から戦前にかけての下町の庶民レベルの暮らしや仕事の様子、出征先の軍隊生活や関東大震災なども臨場感たっぷりに語られていて引き込まれる。一家の親分子分、関わった女たちや人殺しの悪人など沢山の人間が登場するが、皆いかにも戦前の人間らしい生活力に溢れ、一筋縄ではいかないような抜け目のなさと義理堅さを兼ね備えている。2020/01/25

bapaksejahtera

13
大正末期から昭和にかけて博徒として過ごした男。末期の彼を診察した医者の聞き書きから纏めた一代記である。栃木から上京し、親戚である深川の石炭商で働く。浅草の博徒の家に住み込み、博徒同士の軋轢や投獄、応召、戦時中に一家を任された後、戦後の混乱等様々な遍歴をが述べられる。前半生の記述は極めて順を追ったもので興味を持って読み進む。大正期の細民の様子は明治期の貧民ルポそのままの惨状である。狭い浅草で博徒と香具師が棲分け暮らす様は興味深い。戦中戦争直後の混乱は、愉快ではないが事実である。時代も人心も大きく変わった。2021/11/30

Lila Eule

13
ボブ・ディランが2001年のLove and Theftで詩を借用したネタ本らしく、著者は2003年の取材に光栄と応えたとの記事を読んだ。ノーベル文学賞受賞者が無断使用とは解せないが、ボブ・ディランのような生き方なら超越いたしかたなしか。大正、昭和の義理と人情の渡世人の話で、迫真の記録小説に驚いた。語られる清濁混濁の生き様は、きっぷよく、世間様の掟を守るアウトロー姿だが、憎めぬ魅力に溢れていた。吉村昭のいくつかの小説を読んだような気分になった。最後のシーンには、日暮里が登場し、やはり日暮里と余韻に浸った。2017/01/10

タイコウチ

8
しばらく前から気になっていたのだが、品切状態が続いていて入手できなかったところ、ボブ・ディランのノーベル賞受賞のおかげで復刊されたらしい。明治生まれのやくざをたまたま患者として診察することになった開業医の著者による聞き書き。「映画だの小説だのには、博徒同士がやたらと喧嘩をやったり殺し合いをやったりしますが、あんなのは作り事ですよ。…世の中は十人十色ですから、気に入らなければつき合わなければいいだけで、つまらないことで刀を抜くのは馬鹿か気違いです。」というご当人だが、事実上正当防衛で一人殺し服役もしている。2017/06/30

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