感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
84
文化勲章まで受章された作家なのに、恥ずかしながら初読みです。読み始めてすぐに、情景描写にこれまで味わったことのない著者の個性を感じました。13の短篇は、どれも粒ぞろいですが、敢えて1篇を選ぶと【冬の日】。今の人たちは、自宅に職人を呼んで畳替えはしないでしょう。とうに忘れていた、70年も昔の我が家の畳替えを想い出しました。26頁の中に、親子の畳職人と主人公のややこしい人間関係が研ぎ澄まされた文章で描かれていて面白かった。昨夜は一気読みしましたが、再読では一篇一篇をじっくりと味わいたい一冊です。2022/09/18
hit4papa
68
ショートショートな短編集。盛り上がったところで、プツンと唐突に終わるというややストレスが溜まるものの、文章が巧いゆえ読みやすいですね。作品間に繋がりがあるようなないような…。著者周辺の出来事をヒントに、視点を変えてというのが正解でしょうか。ちょっと酷い展開は好みです。五人の子がいながら酒に溺れ自堕落な男に愛想を尽かした妻「狐」、危ない金策を勧誘した知人の死の顛末「名刺」、列車の食堂で見かけた昔の女が伝えたのは「電報」、借金苦の高齢夫婦ら家族の自殺の顛末「青梅雨」です。タイトル作が一番インパクトがあります。2021/07/28
ばりぼー
61
時節柄タイトル買いしました。名文家として名高い氏の、「人生の断面を彫琢を極めた文章で鮮やかに捉えた」、純文学とはかくあるべしとでもいうような短編集。たわいない日常の風景をつまびらかに、とんでもない非日常の出来事をさりげなく…。「狐」の静謐感すら漂う殴り合い噛みつきあいの夫婦喧嘩といい、「青梅雨」における服毒心中を決意した一家の長閑な団欒といい、無駄な贅肉をそぎ落とした文体は、喩えるならヨガの達人。村上龍「限りなく透明に近いブルー」の芥川賞授賞に猛反対した選考委員としても有名ですが、読んで納得です。2015/07/02
みっぴー
47
《カラーズフェア》第四弾。30pほどの短篇集。訳がわかならい。。。(汗)ホラーなんでしょうか?オチが分からずに、ここで終わるの?という話ばかりで。もっとこう、著者の名前やタイトル、表紙を見て、鴎外的な話を期待していたのですが。読解力高い方、読んだら一話ごとに解説してほしいです(>_<) 2018/09/02
ω
46
久しぶりに心の奥底まで触れられた。私なんぞが感想を述べられないと畏敬の念を抱く(´;ω;`) 純文学の中の純文学。無駄のないストイックな芸術ω 崇高な短編集^^ 再読必至!2020/06/17