内容説明
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、敵意に荒んだ遠い下流へとポーを押し流す…。いしいしんじが到達した深く遥かな物語世界。驚愕と感動に胸をゆすぶられる最高傑作。
著者等紹介
いしいしんじ[イシイシンジ]
1966(昭和41)年大阪生れ。京都大学文学部仏文学科卒。’96(平成8)年、短篇集『とーきょーいしいあるき』(『東京夜話』に改題)刊行。2000年、初の長篇『ぶらんこ乗り』刊行。’03年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞受賞。’04年『プラネタリウムのふたご』、’06年『ポーの話』、’07年『みずうみ』が、それぞれ三島賞候補に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オリックスバファローズ
94
まっさらな心の持ち主のポーが、さまざまな人たちと出会い、彼らとの交流を通して自分にとっての「大切なもの」を知り、新しい人として再生するまでを描いた、これは神話的なスケールの物語だった。2018/05/28
Rin
54
どこまでも純粋で真っ白なポー。それは何色にも染まる可能性が秘められているということ。真っ白でまっすぐなポーと出逢う人々。出逢った人たちもポーの影響を受けて、ポーもまた人々からたくさんのことを吸収していく。ポーの成長と変化と経験。そして、どこまでも深いうなぎ女の愛情に天気売りの純真さ。あたたかく、でも残酷で生と死が隣り合わせに存在している物語。命とは罪とはなんなのか、償いとは?ポーとともに翻弄されながらこの世界に浸っていた。女人形の存在とポーの決めた道は本当に深い。泥と海と空、スフスフという音が素敵でした。2016/06/30
優希
51
深い世界の中にたゆたう感覚を味わました。温度を感じないのにとろりとした空気の中にいるようです。ゆっくり川が流れるようなファンタジー。優しくて強くて哀しい世界観を堪能しました。2021/06/10
90ac
37
登場する人物(動物?)はあだ名で呼ばれるので、まるで童話かお伽噺のような感じを受ける。うなぎ女は人間なのか?、臍の緒はあるのでウナギではない。生まれたポーは人間なのか?、裸なのか服を着ているのかも分からない。しかし読み進めるうちにそのような?は関係なしに楽しめる。タイトルを「ポーの冒険」としてもいいくらい。旅で出会う様々な人々や動物との物語が面白い。泥の川はその中に大切なものを秘めて一切分けへだてのなく「ありのままに」流れる。その底から大切なものを拾いあげるのはポーのつぐないか。何とも不思議な作品でした。2015/02/14
エドワード
32
これぞおとぎ話だ。泥の川が流れる架空の街。うなぎ女たちの子として生れたポーの数奇な運命。ポーは手に水かきがあり水中で自在に動ける不思議なヤツ。女好きの泥棒、メリーゴーランド。彼の妹のひまし油。天気売り。風変わりな仲間たちと暮らす街に大洪水が起きる。次いで出会う犬じじ、廃棄物処理屋と鳩レースに興じる女房。天気売りは女人形に姿を変えてポーを何かと助けてくれる。三度目の舞台は海。うみうし娘がキュートだ。どうやらポーは一度命を失うらしい。しかし終わりは始まりにつながる。ポーは再生し、この命の物語は永遠に続く。2014/12/19