出版社内容情報
三島の魅力は長編だけじゃあない。「春の雪」の次はこれだ! 13編の愛の結晶。
夢想好きの早熟な少年がひとり分け入った岬の廃屋で出会った若い男と女――陽光が降り注ぎ、草花の生い茂る夏の岬を舞台に、恋人たちが自ら選んだ恩寵としての死を描く初期の名作『岬にての物語』。他に、生れるとすぐ母親から離され祖母の許で育てられた幼年時代の一齣を描く『椅子』、恋愛と信仰の相剋を取り扱った『志賀寺上人の恋』など、三島文学の精粋全13編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
75
短編集、主に若書き。 表題作(勤労動員の寮で書いた)は煌びやかでありながらかなり衝撃的。言葉使いに酔ってる感はありますが、なかなかすごいと思います。子供の経験としては非常にヘビぃ。後に性格悪くなること必須。 あと知ってる場所関連で、大島舞台だったり、下田の城山(紫陽花祭りによく行きました)の別荘奇談など2022/10/24
i-miya
57
2013.11.23(11/23)(初読)三島由紀夫著。 11/22 (カバー) 夢想好きの少年、岬の廃屋で出会う若い男女。 二人、恩寵としての死。 生まれてすぐに母から離され祖母と住む幼年時代『椅子』。 (解説=渡辺広士) 三島は何を論ずるにも、その死から遡って照射するという取り扱いを受けることが多くなった。 三島=戦中と戦後、十代から二十代、現実離れしたロマン主義的夢想。 2013/11/23
優希
50
美しい世界が広がる短編集でした。音楽、愛など三島文学の精神を感じさせる物語ばかりです。遺作のつもりで書かれた『岬にての物語』は幻想的な名作だと思いました。ダイレクトに世界が伝わるのみならず、三島文学の強い色彩が出ているからこその魅力があるのです。2023/11/30
Gotoran
49
三島、20~40歳にかけての短編、5つの既刊の新潮文庫に収録されなかった13の小品を収録。冒頭の「苧菟と耶蘇」は、現実を知らない少年の夢想で旧約雅歌や中世聖人伝、エジプトの古代物語のようなこの世ではない物語。次に表題の『岬にての物語』では、三島自身の明晰な自己省察を垣間見ることができる。その他では、見詰める目と愛の不能、即ち意識と行為の絶対的な溝が主題の「月澹荘綺譚」、醜と隣り合わせて成り立つ美を感じさせてくれた「志賀寺上人の恋」が印象深かった。 2021/02/24
メタボン
37
☆☆☆☆ 難解な作品もあったが、多くは三島らしい美学、豊饒な言葉を感じられる珠玉のような短編集だった。貧乏で病弱な娘と兄が結託して父を殺害する「水音」、視るだけの存在の侯爵の行為の報いで白痴の女に殺される「月澹荘奇譚」、ストーカーのような40女の死「牝犬」、男の死とともに女の首元に表れたイニシャル「頭文字」など、「死」を題材にした作品に特に魅かれた。2019/05/09