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新潮文庫
音楽 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 263p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101050171
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

兄妹が奏でる禁じられた二重奏。オーガズムの闇に迫るミシマの異色作。

少女期の兄との近親相姦により、美しい“愛”のオルガスムスを味わった麗子は、兄の肉体への憧憬を心に育み、許婚者をも、恋人をも愛することができない。麗子の強烈な自我は、彼女の不感症を癒すべく、懇切な治療を続ける精神分析医の汐見医師をさえ気まぐれに翻弄し、治療は困難をきわめる――。女性の性の複雑な深淵に迫り、人間心理を鋭く衝いた、悪魔的魅力をたたえた異色作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

181
再読。三島由紀夫と精神分析とは、本来的には相入れないと思われる。だから、ここでは精神分析医汐見の手記というスタイルをとったのだろう。すなわち、あくまでも小説の作法としてなのだが、「言い間違い」というフロイト理論の根幹を核にするなど実に巧みなものだ。たしかに、性的快感の反応や姿態は、「美」からは遠く、逆に「冷感症」こそが「美」でありうるのかも知れない。2012/05/28

176
三島由紀夫作品の中では読みやすい文体でした。やはり三島由紀夫の書く美しい日本語に、心が洗われました。小説のジャンルとしては、何とも言いがたい、心理学小説?という感じでした。精神分析医が主役という点ではもはや現代の話でもおかしくないと思います。難しい患者とも長期戦で向き合って患者の嘘を見抜き真実を引き出さないと解決が出来ない、目に見える病気を扱うのでは無い点では精神科医は大変だと思いました。『音楽』『鋏』というキーワードが重いけれど、さすが三島由紀夫は巧いなと思いました。2019/06/21

パトラッシュ

153
三島文学中のエンタメに属しており、純文学系統に比べひねくれたり突き詰めた部分は少ない。精神分析の専門書を読み込んで書いており、『禁色』や『金閣寺』などよりも論理的で破綻がなくまとまっている。それだけにスッキリ読めてしまうが、三島独特の華麗な比喩や観念的な思想展開もないため逆にあとに残るものが乏しい。ただ近親相姦による性と精神の荒廃を扱うなど重いテーマで、同時期に『喜びの琴』や『サド侯爵夫人』を書いていただけに単純な娯楽作品といえない。むしろ非論理的な人間心理の異常さを、精神医学の視点から描こうとしたのか。2021/01/21

遥かなる想い

153
少女期の兄との近親相姦により、美しい「愛」のオルガスムスを味わった麗子がその後の人生で、婚約者も恋人をも愛することができないという当時としては大胆な題材を基にした小説。 彼女の不感症を癒すべく、治療を続ける精神分析医の汐見医師をも翻弄するあたりは、定番の描写。2010/06/12

ゴンゾウ@新潮部

127
兄との近親相姦により冷感症を患い奇行を繰り返す美女と精神科医の話。三島由紀夫の作品としては精神分析の解説や文章も修飾を避け平易な言葉で書かれている。麗子の虚言に振り回されながらも彼女に惹かれながら踏み止まる汐見が滑稽で、きっと自分なら引き込まれているなと思ってしまう。2015/04/17

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