感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
柳田の日本の伝説について書かれたもので当初は少年少女向けに書かれたもの(「日本の昔話」と同様に)のようです。ただその中身はかなりしっかりしたもので、最後の方に出説分布表というのが掲載されていてどこで採取されたのかがわかるようになっています。また昔話と伝説を混ぜてしまって民話という言い方があるけれどもその用語は学問上の言葉ではない、と解説で池田弥三郎さんも言っておられるとおりだという気がします。小冊子ながら非常に勉強になる本でした。2023/10/19
molysk
63
昔話は動物の如く、伝説は植物のようなもの。伝説はある一つの土地に根を生やして、常に成長して行く。こうして、各地の伝説は少しずつ姿を変えたものとなる。水を求めた礼に清水を見出したのは、西国なら空海、越後なら親鸞、関東なら源義家。また、もとは街道沿いに祀られていた女の道祖神の「関の姥神」が、仏教の影響で老婆に姿を変えたうえに、音が同じ咳にご利益があるとして「咳のおば様」に変わっていった、という説明はおもしろい。戦前の少年少女たちに、失われつつある日本の伝説を語り聞かせるような、柳田の筆は優しく、美しい。2023/08/06
鏡子
34
片目の魚のくだりが興味深く読めた。「両方揃っているよりも、片方しかないものを恐ろしく、大切におもっていた」すがめとは片方の目が悪いこと。大蛇が、人間と蛇の合いの子である子供に別れの御守りとして目の玉を抜き、御守りとして渡す話が好きになりました。2016/03/15
鮎
22
息子のための絵本選びの参考にしようと思い、再読。土地にまつわる物語を直に話して聞かせてくれる人がいれば、とつくづく思う。イエのしがらみから開放された現代は、資本主義的な自由と引き換えに沢山のものを失った。それはもう取り戻せないけれど、今改めて神話や伝説の持つ力を見直してみても良いのでは、と思う。流転の激しい人と人との関係に〈絆〉なんて軽薄なキャッチコピーを貼り付けるよりも、人と土地、ひいてはその来歴にまつわる豊かな物語を結びつけることが出来れば、それを仲立ちに自然な集まりが生まれるのでは。2017/08/16
mahiro
20
伝説と昔話を分けて考えるとは思った事がなかったが伝説は植物のように土地に根付く物、昔話は動物のように同じ形で各地に伝わるもの…咳のおばさま、片目の魚など各地の伝説をパターンで分けて元々の発祥と後世に伝わるに従って変化していった過程(元々は太子だったものがいつの間にか弘法大師の大師になったなど)子供向けの本として書かれたものなので難しい書き方ではない。女神がやがて山姥になったり、各地にある山々の背くらべの話、巻末に紹介された伝説の現在の分布表があるのが良かった、現地に行けなくても場所を検索するのも楽しい 2023/08/26