内容説明
高円寺駅北口「純情商店街」。魚屋や呉服屋、金物店などが軒を並べる賑やかな通りである。正一少年は商店街の中でも「削りがつをと言えば江州屋」と評判をとる乾物屋の一人息子だった―。感受性豊かな一人の少年の瞳に映った父や母、商店街に暮らす人々のあり様を丹念に描き「かつてあったかもしれない東京」の佇まいを浮かび上がらせたハートウォーミングな物語。直木賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
198
直木賞】乾物屋のおばあちゃん、両親、息子の4人の物語。純情商店街があって実話かと思ったら、後から高円寺の商店街が純情商店街と改名したらしい。かつおぶしは、昔家でよく削ったが、今では削らない。削って出汁を取る方が、ずっといいと思うけど。。。昔を偲び、今を思う。よい物語。2014/04/14
遥かなる想い
130
そう言えば,昔乾物屋なる商売のお店があった。乾物屋だけでなく、豆腐屋・駄菓子屋・・・たくさんの お店があり、そこには,たくさんの個性があった。この本を読むと、そんな時代のことが思い起こされる。3丁目の夕日と同じで今の人に実感できるだろうか? 2010/04/17
hit4papa
79
昭和の商店街の風景をそもまま写し取ったような作品です。乾物店江州屋の一人息子、中学生の正一が主人公の連作短編集になっています。詩人の著者ならではなのでしょう、言葉の選び方にとても気を使っているようです。人物や情景が、暖かな目線で生き生きと描かれており、読者の心に染み入ります。
はらぺこ
76
商店街が『純情』やったかどうか分からんけど、主人公の正一は『純情』やったし家族も『純情』やった。純情以外の言葉は思いつかん。 今はパックの鰹節を使ってるけど、そういえば自分が子供の頃は家で削ってた。いつからパックを使うようになったんやろなぁ。 十代とかの若い人でも映画の『三丁目の夕日』が好きな人は楽しめると思います。2012/09/11
レアル
75
乾物屋の一人息子の正一。この正一が昭和30~40年代の自分の子どもだった頃の日常を描いている。その描写が正確で乾物屋の息子だけあってその作業や梅雨時期の商売の苦労等がありありと書かれている。家族の話や本人との距離感も面白い。読むとノスタルジックを感じると言うよりも、ただだたその時代の少年目線のこの世界を味わっているという感じで物語に引き込まれてしまう。情景描写も素晴らしく、まるでこの時代に私もいているような気がして、乾物屋の「かつを」の香りがここまで漂ってきそう。。ほっこりとした読了感。何だか癒された。2016/06/20