出版社内容情報
即位したばかりの青年を試練が見舞う…!!
時は昭和3年。
大陸で発生した張作霖爆殺事件に
日本軍は関与しているのか--?
ひとつ対応を間違えば、重大な国際問題へと発展しかねない
危険な状況下に日本はあった。
詳細な調査を命じた裕仁(ひろひと)青年に対し、
のらりくらりと逃げ続けて事態の先延ばしを図る
時の総理・田中義一。
この国の頂点に立つ者として、青年がとるべき行動とは…!?
【編集担当からのおすすめ情報】
幼き日、青年は心に誓った。
「自分のせいで誰かを傷つけてしまうかもしれない。
自分は感情を表に出してはならないのだ」と。
そして天皇となった今。あらためて青年は自らに問う。
不誠実な責任者に対し、いかなる姿勢で臨むべきなのか。
双肩に国民を背負った人間は、どのように生きねばならないのか。
時代が。世界が。キナ臭さを増してゆく最新刊です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
86
田中義一、濱口雄幸、そして石原莞爾が登場する。田中義一は、反日プロパガンダで使われる偽書田中上奏文でも知られる。田中の死には昭和天皇よりの言葉があった。その影響から昭和天皇は内閣や軍が一致し決めた事柄には発言しないとした。次に昭和天皇が発言をするのは、大東亜戦争の聖断か。敗戦か戦争継続。国家中枢で意見が纏まらない事態に、民族の滅亡を防ぐ為の言葉だろう。作品に戻ると関東軍は厳しく描かれている。独断専行が過ぎた関東軍は、実際に昭和天皇からは苦々しく見えていたか。統帥権干犯。現代も続く皇統問題。興味が尽きない。2021/06/13
アキ
75
昭和4年1929年鈴木貫太郎が侍従長に就任。張作霖爆殺事件に関東軍の関与なしと田中義一総理が報告。天皇は「日本国に嘘をつく総理などいらない」と辞任を要求、内閣は総辞職、その後田中は命を絶つ。それ以降、君臨すれども統治せずを決意。昭和5年1930年濱口雄幸総理は若槻礼次郎を全権大使としロンドン海軍軍縮会議で米英10に対し日本6.975を受諾。野党犬養毅は統帥権干犯と批判し濱口総理は狙撃され1年後永眠。満州で関東軍が柳条湖付近で満鉄の線路を爆破し張学良軍と衝突。天皇の不拡大方針も戦線は拡大。昭和の不穏な空気。2021/06/06
オレンジメイツ
26
国を想う気持ちがそれぞれあって、それに飲み込まれないようにするのは大変なことであったんだろうな。2021/05/30
りらこ
24
ちょうど張作霖側からの視点も描いている『中原の虹』『マンチュリアン・リポート』『天子蒙塵』と読んでいるタイミング。裕仁天皇側からの視点。田中義一への怒りとそれをぶつけてしまったことへの後悔。君臨すれども統治せずを実行せんとするが、関東軍の暴走は止められない。軍縮会議での条件、たったの0.25%であっても海軍内は紛糾。そこから出てくる言葉、総帥権の干犯。北一輝の狂気と上奏。つらつらと書きましたが読み応えあり。半藤さんここまで来ましたよ。昭和の動きがよくわかる。次巻がもう待ち遠しい。2021/05/28
ぐうぐう
22
「日本国に嘘をつく総理などいらない‼︎ ……田中」裕仁の迂闊なひとことが、昭和の流れを変える。天皇と政治、政治と軍部。その堅固な関係性が、しかし都合よく解釈され、利用される。いわゆる、統帥権干犯。歴史を振り返るとき、ターニングポイントは明白だ。だが、渦中の人物達はそれを知らない。ただ、裕仁は呟く。「天皇としてーー抱いてはならない2文字の言葉を考えていた……」それは、“後悔”。その2文字は歴史の不可逆性を明かしている。走り始めた昭和は、その速度を上げ、戦争へと向かう。2021/09/29