出版社内容情報
六本木ヒルズに住む大学生澄雄と借金を抱えた父と暮らすジュリアが知り合ったのは、携帯の出会い系サイトだった。すべてをさらけ出して純粋に愛し合うようになったふたりだったが、現実の障壁がふたりに立ち塞がる。
内容説明
「これから送るのは、親しい友達にも話していないことだ。暗くなるけど、いいかな？」「わたしは…今、この瞬間全身でスミオの話をきいてるよ。全部、話して―」六本木ヒルズに暮らす大学生の澄雄と、薄給のパン工場で働くジュリア。携帯の出会い系サイトで知り合ったふたりのメールが空を駆けていく。二十歳のふたりは、純粋な愛を育んだが、そこへ現実という障壁が冷酷に立ち塞がる。無防備すぎる恋は追いつめられ、やがてふたりは最後の瞬間に向かって走り出すことに。格差社会に否応なく歪められる恋人たちを描いた、現代版「ロミオとジュリエット」。
著者等紹介
石田衣良［イシダイラ］
１９６０年東京都生まれ。１９９７年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、続編を加えた『池袋ウエストゲートパーク』でデビュー。２００３年『４ＴＥＥＮ』で直木賞を、２００６年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞を受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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りゅう☆
106
スミオとジュリアの心中自殺の記事から始まる。父親が社長のスミオと年収200万のジュリアは出会い系サイトのメールで知り合う。たくさん話をして、だんだんお互いの事を知りたくなり知ってほしいと願い恋に落ち、体の相性もこれ以上ないほど合う。だが特にジュリアは違う世界だと痛感する。ネックはジュリアのダメ親父だな。ただの貧乏だけなら2人は死を選択しなかったと思う。2人が納得した決断が幸せと感じたのであれば、2人にとってはハッピーエンドなんだろう。でもオバチャンな私は若気の至り故の判断だよな～と思ってしまうのでした…。2018/06/12
Shinji
103
相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を恋愛という... そうなのかもしれないけど、それは幸福の重心がどこにあるかで大きく変わるものだと思う。 謳い文句が現代版ロミオとジュリエット、そして当然のように結末から始まるオープニング。でも、シェイクスピアに引っ張られる事はなく、格差社会と、この本が書かれた当時の出合い系サイト（SNS）への揶揄が程よく感じとれました。スミオの主体性の無さは残念だけど、最後の場面ではジュリアの健気さを思い、悔しさのあまり涙しました… あと、各章の中村佑介さんの扉絵が素敵でした♪2016/07/24
Tsuyoshi
76
出会い系サイトで知り合った澄夫とジュリア。母親を亡くし、父親を嫌うという共通項を持った二人が、生まれた環境や格差を飛び越えて幸せを掴みもうとする話。すべてを捨ててでも二人の愛に突っ走ろうとした二人だが、それこそ二十歳という若さがあってこそのものだろうなぁ。悲しい結末だったが二人で旅立てたのが救いか。2017/11/20
馨
72
ロミオとジュリエット現代版？？のような話。タイトルと、表紙の絵で何となくネット恋愛だというのは想像がつきました。普通の恋愛小説としては私的には可もなく不可もなしでした。
美羽と花雲のハナシ
55
再読。共に母親の死を経験した者が、共に世界に絶望した者が惹かれて恋に堕ちる。それは誰にも止められない。親であろうと、社会であろうと、貧困であろうと。ただ人並みの幸せが欲しい。親指で打つのがもどかしくなる程、親指では追い付けない程、気持ちが溢れて溺れそう。死へのカウントダウンは既に始まってる。蝋燭の火が燃え尽きる直前の煌めきのよう、死ね前の世界はこんなにキラキラとして美しい。一緒に絶望で染まった地獄をエスケープし、赤いリボンで繋がれた天国旅行に行こう。満面の笑顔を網膜に焼き付け、幸福感で満ちたまどろみの中。2013/03/25
