内容説明
国民学校三年生のときに遭遇した東京初空襲に始まり、敗戦直前には、福井市でB29一二七機の夜間焼夷弾攻撃を生きのびたアメリカとの「原体験」。それをバネに、著者が共同通信のアメリカ特派員、インドシナ特派員としての取材のうえでたどり着いたのが「銃」と「民主主義」という日本人にとっては「すれ違う」概念が逆にしっかりと共存している「アメリカという国」だった。第五二回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、英語版もアメリカで2007年に刊行され国際的にも脚光を浴びている作品、待望の文庫化。ブッシュ後のアメリカが見えてくる。
目次
「敵」としての出会い
ルメイ将軍への勲章
武力行使というDNA
「無秩序」からの誕生
原点としてのメイフラワー
「明白な天命」を信じて
「差別」と「排除」
常備軍とマルチ人類パワー
分水嶺だった一九六八年
ネオコンの実像
「逆襲」と「出口」
「ドレスデンの和解」をやれるか
著者等紹介
松尾文夫[マツオフミオ]
1933年生まれ。学習院大学卒業。共同通信社入社後、ワシントン支局長などを歴任。02年、ジャーナリストに現役復帰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
31
再読であるが、米国の銃規制に対しての修正第2条であるが、賛成派反対派の両意見があり時間はかかると思うが、憲法改正も不可能でないと感じた。これだけの銃の事故がある米国で、教育から変革を起こしていけば変わらないはずがない。「明白な天命」はジョン・オサリバンにより唱えられたもの。それ故ポーク大統領の下、西進化は進み米国の太平洋進出に繋がった。その後になるが日露戦争で日本が白人を倒し勝利した事は米国の脅威と映ったであろう。欧州人はよく、日本人を強制収容したり、原爆を落とすなど白人以外を見下す米国の本質が読み取れる2019/05/18
James Hayashi
23
アメリカを長い間報道してきたジャーナリストが米国の成り立ち、銃を持つ民主主義を描く。国民の銃の保持は憲法修正2条(憲法発効3年後)に定められており、これが硬く200年以上守られ、民主主義との分断は難しいと説く。また国内に留まらず、外交的にもアメリカは攻撃を主眼としての政治をとっていることも見て取れる。福井大空襲の経験を通し、米国大統領の広島献花を唱う(2007年)著者が、本年オバマ大統領により実現というニュースを感慨を持って見つめたことだろう。日本エッセイストクラブ賞受賞作。 2016/09/11
ふぁきべ
6
論旨を言ってしまうと、アメリカの銃所有の問題は、国民が連邦政府や州政府に対して抵抗するためという考えがあるというところに根差している、ということだ。元々の国の成り立ちとして、重税を課してきたりと圧力を強めていた英国本国政府への反発から独立へとつながっていったこともあり、政府は国民によって作られ、そしてそれが国民の権利を妨げるようなことになるならば、国民の手によって武力打倒すべきだという考えが根底にある、というのが著者の言い分。そしてその武器(銃)を持つ民主主義というのが60年代のリベラル、そして現在の→2017/07/22
nizi
4
戦中派ジャーナリストによるアメリカへの好悪が入り混じる研究本。著者かねてから広島献花外交が持論であり、ドレスデンの和解を理想としている。そのためか、やたらカーチス・ルメイ(対日爆撃の責任者)のことが出てくる。献花は結局、著者没後の2023年に結実したわけだが、泉下の著者がどう感じたか聞いてみたい気がする。2024/02/18
muko1610
0
★★★2008/07/13