出版社内容情報
両師こそ日本人の精神、倫理観の源泉である
現世と来世における善行の積み重ねによる成仏を説く最澄に対して、この身そのままで自然神との一体化による即身成仏を説く空海。それぞれの教えは対極にありながら、われわれ日本人の心情と深く響き合う。両師とも、古来より根強くあった日本人の山や木に対する信仰を受け継いで、神と仏の融合をはかった点においては共通であった。二人は日本独自の仏教を創造し、日本人の倫理観、精神の拠りどころとして定着させたのである。
日本人の心のふるさと
目次
1部 たたかう求道者、最澄(最澄瞑想;最澄と天台本覚思想)
2部 万能の天才、空海(空海の再発見―密教の幻惑;人間弘法大師を説く十章)
著者等紹介
梅原猛[ウメハラタケシ]
1925年、仙台市生まれ。京都大学哲学科卒。立命館大学教授、京都市立芸術大学学長、国際日本文化研究センター初代所長など歴任。主著に『隠された十字架』(毎日出版文化賞)、『水底の歌』(大仏次郎賞)などがある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃとら
64
4月に高野山に行く前に、空海の章を読み、最澄を途中にして積んでいた。空海と最澄を比較する本は多いがこの本は深く難解だった。現在に至る日本の仏教の祖、共に権力と結び発展してきた。山岳信仰でもあるが、空海は大日如来、最澄は釈迦。二人の違いと流れは掴めたが、この本にたっぷり詰まった仏教論は、また再読しないと私には理解できそうにありません。深い本でした。2019/06/30
№9
37
司馬遼太郎の「空海の風景」を読み終わったとき、このままでは自分は空海や最澄のことを誤解したままになると感じた。その描き方には何か釈然としないものを感じた。本書はそんなモヤモヤを晴らしてくれるものだった。最澄と空海を公平に扱っているし、特に「空海」の「分からなさ」の理由の一端がわかったような気がした。難解な二人の宗教理論もとても平明に解説してくれている。入門書として良書だと思う。読了後、著者の梅原は「空海の風景」を痛烈に批判して司馬と絶交したことがあると知った。最後の「人間弘法大師を説く十章」は圧巻だった。2015/04/27
90ac
36
「空海の風景」を読み終わった後、最澄さんが何となく惨めに感じたのでこの作品を読んでみた。日本の仏教の礎となった仏教総合大学を創った素晴らしい人ですね。カリキュラムも良く考えられており、空海さんから経典をたくさん借りたのも、教科書をたくさん後世に残す意味ですごい業績だと思います。後半は前半と重複する文章が多かったのが残念です。第二部では密教の“即身成仏”の意味が始めて分かりました。また、密教の教義のすべてが集約されるという“吽字義”についての説明はかなり難しくお手上げです。空海さんの凄さを改めて感じました。2019/07/14
aisu
9
マンガ「阿・吽」繋がりで読んだ。マンガで描かれているイメージ、そのままでした。さらに補完された。仏教解説については、難解な部分もあったが、天台宗、真言宗って何?密教って?という事が、なんとなーくわかったような気がする…。仏教って、お釈迦様だけでなくなぜあんなに沢山の仏像の種類があってみんな熱心に拝んでいるの?とか。2022/05/27
ア
6
おもしろかった。最も澄める人−最澄と、空と海のような人−空海。南都仏教から距離をとり、桓武天皇に支えられて、聖徳太子以来の『法華経』と密教『大日経』を同等に重要なものとみなす最澄。嵯峨天皇と結びつき、顕教と密教には隔たりがあるとし、体系的な密教を打ち立てた空海。空海密教が体系として完結していたのに対し、一乗思想を唱える最澄の天台宗は鎌倉仏教を生むこととなる。2022/11/29