出版社内容情報
シリーズ悼尾を飾る芥川賞作ほか初期傑作集。
紀州の山と川と海に閉ざされた土地で、逃れがたい血の桎梏にもがく青年“秋幸”の内なる滾りと切なる叫び──。血縁地縁の深みを照らし、独自の文学世界を切り拓いた芥川賞受賞作「岬」をはじめ、架空の隠国市を舞台に路地の業火を濃密に描いた文庫初収録作品「臥龍山」「藁の家」。故郷・熊野をめぐる荒くれ男の漂白譚に、虚と実の玄妙が鮮やかに映し出される「修験」と「化粧」。哀切に充ちた究極のエロティシズムを流麗な文体に結晶させた「重力の都」。根の国・熊野を豊かに覆う中上文学の甘美なるエッセンスを凝縮した選集最終巻。(解説 金井美恵子)
内容説明
紀州の山と川と海に閉ざされた土地で、逃れがたい血の桎梏にもがく青年“秋幸”の内なる滾りと切なる叫び―。血縁地縁の深みを照らし、独自の文学世界を切り拓いた芥川賞受賞作「岬」をはじめ、架空の隠国市を舞台に路地の業火を濃密に描いた文庫初収録作品「臥龍山」「藁の家」。故郷・熊野をめぐる荒くれ男の漂泊譚に、虚と実の玄妙が鮮やかに映し出される「修験」と「化粧」。哀切に充ちた究極のエロティシズムを流麗な文体に結晶させた「重力の都」。根の国・熊野を豊かに覆う中上文学の甘美なるエッセンスを凝縮した選集最終巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
18
☆4 初読み作家さん。文体とも相まって全体の雰囲気は鬱々としてる。血のつながりがマイナスの意味で濃すぎる。特に芥川賞受賞作の「岬」は最後まで誰と誰が本当のきょうだいなのか把握しきれなかった。仕事サボって(しかも妻や彼女以外の相手と)一日中ヤってるのもいるし。地理的にも閉鎖的な環境だとそういうことになりやすいのかな。紀州・熊野のイメージアップの素材には間違っても使われまい。2023/02/13
メルキド出版
4
「岬」2020/06/21
文也
3
何をおいても「重力の都」が凄い。こちらを引きずり込むような文章に圧倒される。これを選集のラストに持ってくるのが何とも心憎い。中上の描く「紀州」「路地」はそこに生まれ生きる人達の体も魂も縛り続ける。まさに重力のように。この作品を谷崎に捧ぐと中上本人が言っていたらしいが、春琴抄のオマージュを多分に含んだ本作も、中上が描くとここまで重苦しくなるものなのか。2020/10/28
shouyi.
2
中上健次を読むと運命の怖ろしさ、人間の暗さみたいなものを感じる。もうこういう直截的なアプローチで土着的物語を書く人は出てこないのではないかな。また、こんな圧倒的なに力技でぐいぐい書いていく作家も現れないのではないだろうか。2017/08/06
ねこはこね
1
岬はこれで三度目。重力の都は二度目。私自身、視力障害をもっているためか、重力の都を読むと心が傷つく。でも傷つきたいから読む。2012/05/17