出版社内容情報
医師として頭角をあらわしたシヌヘ。しかし妖艶な美女に全財産どころか両親の命も奪われ、自らの手でミイラにし失意の旅に出る。紀元前14世紀のエジプトを舞台に、怪奇・愛欲が渦巻く奇想天外の歴史小説。
目次 第一章 少年時代 第二章 生者の家 第三章 テーベ熱 第四章 ネフェルネフェルネフェルゥ 第五章 ハピル人 第六章 偽王の日 第七章 闇の館 第八章 帰郷 解説 吉村作治 リスト・オブ・ブックス
内容説明
今から三千四百年前、古代エジプト新王国の都テーベで医師の道を歩んでいた青年シヌへは、宮中で出会った妖艶な美女にもてあそばれ、財産と両親の命を奪われ、みずからの手で両親の亡骸をミイラにして失意の旅に出る。本書は、この主人公シヌへがバビロニア、シリア、クレタ島へと旅を続け、異国の風俗習慣・政治・文化にふれつぎつぎと事件にまきこまれていく壮大な歴史小説である
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
9
同著者の『エジプト人』の抄訳版。元は800ページ超の大作だが、本書はシヌヘの動向に絞っているのでわかりやすい反面、物語としての重厚さには欠ける。とはいえ古代エジプトを舞台にしたミイラ医師シヌヘと、彼に付き従う忠実な奴隷カプタの絆、知識を求めて諸国を放浪するも結局ナイル川の水が忘れられず故郷へと帰還していくストーリーは、十分面白い。本書を読んで、物語としての醍醐味を味わいたい人は、ぜひ『エジプト人』に挑戦してほしい。本書がベストセラーになった所以が理解できるだろう。2018/04/03
ケンチャン
3
古代エジプトが舞台ということで手にとった。結果は、エジプト以外にもシリアなどの話も出てきて、面白く最後まで読めた。ミイラに関する話は本の一部なので、古代エジプト社会に関する旅行記と思って読んでもらえれば、満足のいく作品だと思う。吉村先生の解説にあるように、抄訳であるこの本の分量くらいが丁度良いのかもしれない。地球人ライブラリーには、面白い本が多いので、これからしばらくは、このシリーズを次々と読んでみることにする。2011/05/12
斑入り山吹
2
すごくよかった!ところでこの題名、だれそれさんへ、のe、シヌeかと思ったら、he、シヌheという主人公の名前だった。古代エジプトが舞台で、なんともいえないエキゾチックな雰囲気がたまらん。これに匹敵するのは、ヘンリー・トーリス『オイディプースの放浪』くらい!?解説は、エジプトといえばこの方吉村作治氏で、それを読んでショックを受けてしまった。この本、抄訳なんだって…。角川文庫上中下巻で出たようだ。復刊ドットコムで投票しよう。とはいえ、抄訳は抄訳の良さがあるでしょう、この本もとてもよい話です。2011/02/27
AkiTakahashi32
1
古代エジプト新王国時代、テーベで医者の道を歩んでいた青年シヌへが、ある出来事がきっかけで、失意のうちに旅にでる。 バビロニア、シリア、クレタ島で、様々な風習、政治、文化ふれつつ、色んな事件に巻き込まれるという壮大な物語。 古代エジプトではどのような医術があったのか、市民はどのような生活をしていたのか、ミイラにも裕福な者と貧者で、処理にもランクがあることなど、当時の風俗習慣の様子を知ることが出来て、とても面白かった。 古代エジプト人の死生観にも触れることが出来て、とても良い本でした。2021/08/20
司書見習い
1
古代エジプトの都テーベ。医師の息子として生まれたシヌヘは、父の後を継ぐべく医師になったものの、女に騙されてエジプトを出奔するハメになる。以後、彼は罪を背負いながらも、医師としての技量を頼みに諸国を放浪する、という話。 医師資格を得るため「生者の家」の番をしたエピソードと、バビロンの偽王の日のエピソードは特に面白い。2017/01/09