出版社内容情報
70年代のマンガ界を代表する作品のひとつである、一郎と幸子の幸薄い同棲生活を描いた表代作「赤色エレジー」をはじめ、シュールな7作品を収録した中・短編集。
▼第1話/赤色エレジー▼第2話/アグマと・息子と・食えない魂▼第3話/吾が母は▼第4話/赤とんぼ▼第5話/山姥子守唄▼第6話/花ちる町▼第7話/桜色の心●あらすじ/マンガ家を目指しながらも上手くいかない一郎と、そんな一郎を愛し支える幸子。二人は共にしがないアニメーターとして仕事をしながら、どうにか日々を暮らしている。この二人のなんとも刹那的で行き場のない同棲生活とその破綻を、独特の前衛的なタッチで描いた、マンガ史に残る名作(第1話)。●本巻の特徴/表題作の他、地獄にいる悪魔の親子の話「アグマと・息子と・食えない魂」、カエルの子供を主人公に戦争を描き、日本とアメリカの関係を暗示させる「吾が母は」など、ひたすらシュールな中・短編を全7話収録。●各作品初出年度/▼「赤色エレジー」1970年▼「アグマと・息子と・食えない魂」1967年▼「吾が母は」1968年▼「赤とんぼ」1968年▼「山姥子守唄」1968年▼「花ちる町」1968年▼「桜色の心」1971年●その他のデータ/「赤色エレジー」に強い感銘を受け、同名の自作曲が1972年に大ヒットしたあがた森魚氏のエッセイ「僕たちの暴力や殺戮(さつりく)がいつ止むとも知れぬ今しがた……」を巻末に収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
86
山川方夫の「頭上の海」を読み、本作品が浮かんだ。が、内容を具体的には思い出せず、一度手放した本を再購入した。何を読み直す必要があっただろうか、私はこれを知っていたのに。立ち位置を決め、責任の所在を明確にしてしまったら、自分の無価値さを突きつけられるのではないかという恐怖。何もかも失うくらいなら、理想の残滓を握りしめたまま先延ばしにしていたいのだ。しかしいくらしっかりと握りしめても、指の間から砂がこぼれ落ちていくように、ずっとこのままではいられない。逃避の中の愛は、何にも縛られないが故に美しく儚い幻想。2021/08/23
YM
63
先の見えない不安はいつまで続くんだろう。たぶんずっとなんだろう。目の前のことでいっぱいいっぱいで。身近な人も思いやれない。心がカラカラになってたなあ。やっぱり本読まないと。。2015/10/02
かっぱ
33
小梅ちゃんのイラストで有名な漫画家さん初読み。「ガロ」掲載ということで時代の空気を知っているのと知らないのとではこの作品の感じ方は全然違うのではないかと思えた。連載終了後に生まれた自分は描かれた当時の時代の空気は知らない。木造アパートに裸電球にひと組みだけの布団。漫画で飯を食おうとしている20歳の青年とその恋人の物語。愛し合っているけど結婚には踏み切れないでいる。血を連想させる描写が多いのは生活の苦しさを現しているのか。そんな赤色の生活を積み重ねる中で二人が選んだ結末は。表題作「赤色エレジー」ほか6編。2018/06/16
大泉宗一郎
15
とてもシュールだ。主人公たちの意識にあるものは写実的に描かれ、逆のものは徹底的に簡略化されている。それは画のタッチにおいても、ストーリーにおいても一貫している。物語の終盤になってようやくこの試みの必然性がわかるけれど、ヘタウマと写実画がひとつのコマでひしめき合うさまはなんだか不安を掻き立てられる。それが作者の持ち味かな。『ガロ』という自由空間がなかったら完成しなかったかも知れない。2017/06/07
阿部義彦
12
解説はあがた森魚さんです。飛躍した大ゴマの使い方には、「ねじ式」と同じ様な幻想的な構図が見られます。裸電球から黒いタールみたいなのが垂れていて電気をつけるとそれが霧散するのがえらく印象的でした。マンガがなんでー。2015/08/31