出版社内容情報
20年以上にわたるつげ義春の創作活動をまとめた短篇集。初期の心暖まる作品「古本と少女」から、80年代の「近所の景色」に至るまでの、万華鏡にも似た彼の世界がここにある。
▼第1話/紅い花▼第2話/李さん一家▼第3話/通夜▼第4話/海辺の叙景▼第5話/西部田村殺人事件▼第6話/二岐渓谷▼第7話/ほんやら洞のべんさん▼第8話/女忍▼第9話/古本と少女▼第10話/もっきり屋の少女▼第11話/やなぎや主人▼第12話/庶民御宿▼第13話/近所の景色●あらすじ/少女がたった1人で番を務める峠の茶屋がある。ある日、釣にやってきた男がそこに立ち寄った。彼がしばらく休んでいると、そこに少女の同級生のマサジがやってくる。マサジに案内されて、男はヤマメの穴場へと向かうが、その道中で彼は見知らぬ紅い花が群生しているのを見る。そうこうしているうちに彼らは穴場に到着し、男と別れたマサジは山道を戻ってゆく。そのときふとマサジは、茶屋の少女が川の浅瀬に入ってしゃがみ込む姿を目撃する。マサジの目の前で、少女の臀部から出る鮮血の流れが、落ちてくるたくさんの紅い花を飲み込んで流れてゆく…(第1話)。▼日光浴をする男の脇に、美女が寝転がる。彼はその女性に好意を抱くが、声をかけることもできず、連れらしき男に嫉妬するばかり。ところが、日が暮れた海に男が再びやって来ると、そこにはたった1人で彼女が膝を抱えていた。昼間の男について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
106
ひさしぶりに再読したら心に沁みた。沁みたというより染み込んでそこに根を下ろしてしまった感じだ。先日『重版出来』という漫画を読んだ。漫画家の過酷な生活を編集者の眼から描いた作品だ。漫画で売れることが第一とされことがよく分かる内容。つげ義春が描いたような作品は、今の漫画界では相手にされないだろう。暗く、重たい世界で、読んで気持ちが晴れることはない。売れ線を狙った漫画も嫌いではない。それでも、時にはここに描かれているようなうらぶれて、寂しげでそれでいて人肌の温もりを感じられる世界に、浸っていたいこともある。2017/05/08
アマニョッキ
53
つげ義春さんの作品を手に取ると、日本人で良かったなと心から思う。このえも言われぬ感覚を味わえて本当にありがたい。なんでみんなもっと読まないのかしら。あと、そろそろ本気でニコニコ堂行きたいや。2020/06/25
ちゃりんこママ
37
「紅い花」はつげ作品で最も好き。田舎の野暮ったい乱暴者らしい思春期の少年が、初潮を迎えた(ここの表現に作者の優しさが滲み出てる)少女にとても優しくて、イマドキのスケベ馬鹿男共に見せてやりたいわ。2014/08/07
たまきら
31
断片的で、目覚めた時に不思議な感情を抱かせる夢があるじゃないですか。この人の短編はどれもそういう感情を抱かせてくれます。いやだったり、恥ずかしかったり、悲しかったり、怒りを覚えたり。その感覚が好きで時々読みたくなるんだろうな。2017/07/07
たつや
31
昔買った本がひょっこり出てきたので、読んだら、味わい深くて素晴らしかった。タイムマシンに乗った気分だ。いまの漫画は味がない。2016/08/18