出版社内容情報
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。ギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
153
不朽の名作と言われるこの作品。予想以上に奥の深い、読み手によっては難解で好き嫌いが分かれそうな印象。時代設定は不明だが、舞台となるのはドイツの高等中学(ギムナジウム)。そこに通う少年達のキリスト教ベースの愛の物語。愛とはいえ少年愛と一言に括ってしまうのは違う気がする。もっと慈愛と自己犠牲に満ちたものを感じたし、なんだかとても切なく哀しい。少年期だからこその心情がうまく生かされ、繊細で文学的な表現が今も読み継がれている所以なのかもと思った。個人的には無垢なトーマよりオスカーが切なかった。森博嗣版も読みます。2013/06/27
❁かな❁
130
お気に入りさんにお借りして初めて萩尾望都さん読みました!冒頭のシーンからすごく印象的であっと言う間にこの世界観に入っていく事ができました。外国の学校を舞台にしたお話です。男の子同士の純愛が綺麗に描かれています!男女の恋愛よりもこの作品は男の子同士にしたのが良かったと思います(*^_^*)トーマの命がけの想い、他の登場人物達の揺れる気持ちなど繊細に描かれていました。トーマやエーリクなどの純粋な想い、オスカーの見守り続けた姿、ユーリの過去など、すごく苦しくて切なかったのですが、とても綺麗な作品でした☆2014/06/22
buchipanda3
109
ドイツ高等中学で繰り広げられる少年たちのドラマチックな普遍的愛の物語。彼らの無垢でナーバスな姿が大胆かつ美しく繊細に描かれているのがとても印象的だった。トーマに対する自分の本当の気持ちとそれを遮る気持ちとの鬩ぎ合いに苦しむユーリ。彼の体の傷が忘れさせない心の傷の大きさには畏怖の念を抱いてしまうほどだ。それを変えたのはエーリクの真っ直ぐさとオスカーの慈愛。特にエーリクが翼をあげると言った場面、信頼とも友情とも愛とも言える無償なものの存在を感じた。それは透き通った少年の頃というものがもたらしたのかもしれない。2020/12/28
青蓮
91
友人からオススメされて読んでみた。ユーリに手紙を残してトーマが死んだ冬の朝から始まる、透明な季節を過ごすギムナジウムの少年達に投げ掛けられた愛と試練と恩寵の物語。死者であるトーマの存在感が全体に渡り貫かれていて何とも言えない余韻を残している。信仰の暗い淵でもがいていたユーリの魂の叫び声に応えようと戸を叩き続けていたトーマ。ユーリを囲むオスカーや、トーマに似ているが中身は正反対なエーリク。2人は違った「愛」の形で苦しみを背負いながらもユーリを助けようとする。「愛と赦し」の世界観。傑作です。難解だが美しい。2018/06/01
cozicozy
62
【図書館】萩尾望都さんの代表作。題名だけは知っていたのですが、手に取らずに現在に至ります。そして、図書館の棚に見かけて、手に取る機会となりました。心が痛くなる言うのでしょうか。衝撃的な物語の始まりから、惹き付けられました。文学作品のような香りのする作品です。自分の本として、手に置きたい作品です。萩尾望都作品は、多くを読んでいるわけではありません。これから、他の作品も読んで、この『トーマの心臓』も読み返したいと思うのです。萩尾望都作品では、『マージナル』がとても忘れられない物語です。2014/05/02