蝶のゆくえ

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  • サイズ B6判/ページ数 251p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087747171
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

母親の美加が18歳の時に産んだ子。美加の再婚とともに新しい父親と暮らすが、親として未熟な二人に虐待され死亡。―孝太郎(7歳・小学生)「ふらんだーすの犬」。「男の26は若くて、どうして女の26は若くないんだ」二度も二股かけられた男に呼び出され性懲りもなくまた会ってしまう。―晶菜(26歳・OL)「ごはん」。「私お母さんが大好きなの」いきなり夏子に告白されとまどう。女の19歳は問題が多い。―アオイ(19歳・短大生)「ほおずき」。深夜コンビニにたむろっている若い男たちに注意したことがきっかけで暴行を受け、夫が死んだ。殺された。定年退職した直後に。―静子(58歳・主婦)「浅茅が宿」。夫の仕事がうまく行かなくなったのを契機に夫の実家で暮らし始めたが、大学教授の舅と姑との暮らしは耐えがたいものがあった。―加穂子(37歳・主婦)「金魚」。毎年白菜漬を送ってくる母親が怪我をした。久々に故郷に帰り同窓生に会う。―孝子(57歳・主婦)「白菜」。最新小説集。

著者等紹介

橋本治[ハシモトオサム]
1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。1977年「桃尻娘」で講談社小説現代新人賞佳作入選。以後、小説・評論・古典の現代語訳・エッセイなど、あらゆるジャンルにおいて執筆活動を行う。2002年に『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で小林秀雄賞受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

クリママ

49
6編の短編集。第1編「ふらんだーすの犬」虐待が題材であり、淡々と綴られる文章は、まるで新聞記事のようにリアルで、同様の事件を思い起こし、その悲惨さ、理不尽さが胸が痛い。若い女性の会話であったり、夫を突然を亡くした主婦であったり、第1編とは正反対の教養と品位のある家庭であったりと、気づけばすべて女性が主人公だった。その客観的な筆致は怖ろしく感じるところさえあり、これが橋本作品なのかととても印象に残った。2021/02/14

キムチ27

19
よく知られた「ネロとパトラッシュ」が大聖堂のルーベンスの壁画の前で亡くなっている物語(小学校のころに読んで、一人で布団をかぶっておいおい泣いた記憶が)と同名の題名とされているが・・ ネロはパトラッシュに包まれたぬくもりの中で黄泉の世界へ旅立ったが、この作品の孝太郎は7歳で名もない若い看護婦の柔らかい手を「母親の温もり」と思ってか・・笑みすら浮かべて?亡くなった。 余りの衝撃にも橋本氏は一切感情を入れないというのが批評的メッセージか。凄い作品としか云いえない。2013/06/28

てらこ

14
さまざまな年代の女性たちを描いた短編集。児童虐待がテーマの「ふらんだーすの犬」が一作目で、最初からえぐられました。普段ニュースで断片的に見聞きしているだけの「虐待」が、ひょっとしてこんな風に生まれているのかも…と思うと怒りと虚しさがこみ上げてきます。他の作品では、定年退職した3日後に亡くなってしまった夫とその妻を描いた「浅茅が宿」、老いた母の怪我の知らせを機に故郷を訪ねる主婦が主人公の「白菜」が好きでした。細かい感情の動きがいろんなところに散りばめられている感じがして、読むたびに発見がありそう。2020/02/22

還暦院erk

9
図書館本。最初の短編がツラ過ぎて、しばらく他の短編読めなかったが、続く5作品は理屈っぽさが橋本さんらしくて割と楽しんで読めた。携帯を壊すシーンが2作品に出てきたけど、これ、今どきの人にとってインパクトあるんだろうなぁ。「浅茅が宿」は特異な設定なのに妻や子供たちの反応描写がリアル…。子どもの虐待ものには心がぎゅうぎゅう痛くなるわたしは、悲惨な最期を遂げた夫にあんまり感情移入できなかった。何故?残された妻は気の毒だと思ったけど。2018/07/22

ソングライン

6
作者の読売新聞連載中の小説がとても面白く、本作を読んでみました。女性の主人公からみた家族の風景が簡潔な乾いた文章で描かれ、薄れていく夫婦、親子の絆が浮き彫りにされていきます。虐待の後に訪れる幼児の切ない安らぎに作者の怒りを感じる「ふらんだーすの犬」、老いたと思った母の存在感にふっと気づく娘を描く「白菜」が印象に残ります。2018/03/27

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