内容説明
冬の寒さと精密機械と御柱祭で知られる諏訪で、一人の高校生が、ふと見た写真雑誌に興味を惹かれカメラマンを志す。東京の写真学校へ入学した彼、小林紀晴は諏訪盆地を離れ新宿駅に降り立った―。そこから始まる新しい日々。バブルで浮かれる大都会で出会う興奮と孤独と希望と失意の、ひりひりするような二年間。人はなぜ写真を撮るのか。自分は何者なのか。故郷と都会に寄せる複雑な思い。懐疑と自省を繰り返しながら、友情と恋愛を糧に、すこしずつ大人になっていく二十歳の頃。写真学生青春記。
目次
1 中央線
2 浅草
3 歌舞伎町
4 赤坂
5 喫茶店
6 距離
7 皇居
8 目黒川
9 諏訪
10 シューズボックス・ギャラリー
11 卒業制作
12 暗室
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨータン
13
自分が20才の頃に味わった青春独特の痛みや孤独感を思い出して、とっても懐かしい気持ちになりました。特に好きな人へ思いを伝えたくても伝えられない気持ちとか、当時を思い出して、胃がキリキリしました。2017/01/03
yu-u
1
写真家・小林紀晴氏の回顧録的な自伝小説。氏の高校卒業から写真学校の頃が淡々と描かれている。写真家ならではの感覚なのだろうか? 文章にどこか浮遊感がありつつも、その時々に氏が見た情景がありありと目に浮かぶ。ふと自分の十八、九の頃を振り返りたくなる。2011/07/03
ゆうすけん
0
写真をやってる身としてとても胸を付かれる思いがした。2014/01/05
obst
0
国語のワークに載ってた・・・2010/10/25
金木犀
0
写真作家を探していた時に偶然辿り着いた一冊。写真学生であれば、多くの人が共感性羞恥を感じであろうリアリティのある話だった。物語中、繊細な感性で描かれる季節感の描写や田舎と都会の対比には、新海誠らしさを感じた。調べたら全く同じ出身地のようだった。青春期の不安定な心、写真表現の悩みを抱えながらも不器用に人と関わり撮り続けることを選んだ主人公。暗室のライトや酢酸の香り、作品作りの葛藤、それでものめり込んでしまう経験は自分にもあったのでまるで、日記を読んでるかのように思えた。2021/06/02