内容説明
わたしの名前は栞。部屋に迷いこんできた「やどかり」を追って隣の少年が訪れてきたことから、奇妙な物語の扉がひらいた―。義姉が「それを探しに行く」という謎の手紙を残して失踪したり、兄が名前を偽って重婚が判明したり、やどかりに尾行されたり、義姉と名乗る変な女に部屋を占領されたり、まずい卵料理を食べさせられたり。そりゃあ、勿論、人生にはいろいろあるけれど。1993年の夏、私と兄をめぐる「不思議な真実」にみちた話をしよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
*asami*
18
ある夏の日に、栞がふいに足を踏み入れてしまった奇妙な世界は、決して「あるある!」とはならないが不思議と心地良い。厄介な兄夫婦、兄の愛人、やどかりを探す少年…。誰も彼もが何かを探しているこの物語は夏の夕方に少しずつ読み進めるのにぴったり。2015/08/19
あっきん
17
不思議な物語、不思議がいっぱい。でもそれを一旦受け入れてしまうと、とても気分よく最後まで一気に読むことができました。江國作品で前回読んだ「きらきらひかる」とは全然違って、今回はとてもさわやかなお話。嫌いな登場人物が一人もいませんでした。これは非常に珍しいことです。2014/04/09
megumi♪
16
ヤドカリの出現と共にしおりが巻き込まれる奇妙な夏の物語。沢山の鬘を持っている順子 、「それ」を探しに行った幸裕の妻遙子、料理が下手なめぐ、そしてしおりの行く先々に現れるヤドカリ。まるでファンタジーのような個性的で自由な人々。そして2人で2ヶ月も家出したり、キャラメル箱で会話するしおりと幸裕の兄妹が一番不思議だけど、しおりが幸裕を大切に思っていることでストーリーが動いていく。真夏の昼間のような、やんわりと熱に浮かされてるような不思議な読み心地でした。2020/04/12
読み人知らず
6
なんだかおしゃれな本でした。ちょっとした言い回しとか、使ってみたくなるせりふもあり。ヤドカリがかわいく思える2015/10/02
星野
5
意外。元々作者の作品はふわふわ地に足がついてないイメージだったものの、こんなに不思議な世界観をあますことなく提示するとは。感性を頼りに世界がまっぷたつ。何でか村上春樹や長野まゆみが浮かんだ。キャラメルの箱が電話になる、という描写が凄くお気に入り。お兄ちゃんも好きだな。2011/04/27