内容説明
『エセー』の刊行をなしとげたモンテーニュはイタリアへ旅立つ―。偉大な思想家の旅と思索の日々に同行する。第3部完結編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
23
最終巻は,1580年のイタリア旅行(第1章~第5章)から死(1592年),そして,その6年後のナントの勅令まで.▼ローマを見たモンテーニュの言葉から,古代ローマこそが彼の魂の故郷だったことが感じられる.ローマから帰国後は,ボルドー市長も務め,目まぐるし政情の変化なかで調停役として国政に係わり続けたことが推測を交えて記述される.『エセー第3巻』(87年--88年執筆)も,政治的折衝の合間を縫って書かれた,と(p.229).最終的に隠遁したのは1589年.→2021/11/26
かんやん
2
ナントの勅令に至る内戦の行方を追いながら、ミシェルの思考の変遷を辿る。体験と観察を積み重ね、原稿にどんどん加筆して、思索を深めてゆく。物語や戯曲でなく、ましてや哲学書でもない新たなジャンルは、人間をトータルに捉えるために新たに生み出されたスタイルであり、自分自身(人間)をテーマに取り上げた内容とともに画期的なものだったろう。驚かされるのは、彼の思考が人間中心主義、理性中心主義、ヨーロッパ中心主義に陥らず、具体的かつ率直でユーモアに富んでいること。これほど偏見のない自由な精神は現代でも稀なものだろう。2015/03/15