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玉ねぎの皮をむきながら

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  • サイズ B6判/ページ数 463p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087734591
  • NDC分類 940.28
  • Cコード C0098

内容説明

ノーベル文学賞作家のグラスが、本書で17歳の時にナチスの武装親衛隊員だったことを告白した。ナチス社会を容赦なく批判し、「ドイツの良心の番人」とも言われたグラスのこの告白は国内外に大きな衝撃を与え、ノーベル賞返上の声まで出た。本国ではまたたく間に大ベストセラーとなり、世界中で翻訳が刊行された。この告白だけが取り沙汰されているが、本書は自己の歩みを年代記的に追った個人史であり、ドイツを中心とするヨーロッパ史、世界史が織り交ぜられた一級の文学でもある。創作活動の舞台裏などのエピソードも惜しげなく盛り込まれ、その絶妙な語り口で読者の心を強く揺さぶる自伝の傑作であり、戦争体験者の貴重な実話として歴史的価値も高い。グラス・ファンの必読書であり、多くの新しい読者をも魅了する一冊である。玉ねぎの皮を一枚一枚むくように、グラスの全貌が明らかになる。

目次

皮の下からまた皮が
カプセルにしまいこまれたもの
彼は「ワタシタチハソンナコトハシマセン」という名だった
私はいかにして恐怖を学んだか
お客たちとテーブルを囲んで
地上と坑内
第三の飢え
私はいかにしてタバコを吸うようになったのか
ベルリンの空気
音もなく癌が進行するあいだに
結婚式に贈られたもの

著者等紹介

グラス,ギュンター[グラス,ギュンター][Grass,G¨unter]
現代ドイツ最大の作家。1927年、港町ダンツィヒに生まれる。第二次大戦中、最年少兵士として召集され、戦闘に参加して負傷、米軍の捕虜となる。この体験が後に作家としての核となる。『ブリキの太鼓』『猫と鼠』『犬の年』の“ダンツィヒ三部作”で地位を確立。その後も『鈴蛙の呼び声』『蟹の横歩き』など問題作を次々に発表。’99年にノーベル文学賞受賞

依岡隆児[ヨリオカリュウジ]
1961年高知県生まれ。徳島大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

52
心底に眠る真実。皮をむく必要性を促す心の葛藤。疑問を感じない思考と、疑問を問えない環境。一皮一皮に刷り込まれる・・・という件は印象的。戦後収監された収容所での真実や、家族の身に起きた真実など、走馬灯のような”想起”による苦悩。著者の父親のナチス入党に失望する点など、自己防衛本能も一枚の皮。時間をかけて皮をむく姿勢を否定できようか・・・。誤解を恐れず言えば、ノーベル賞返還など著者への批判は的外れ。禁書も含め軍隊生活でも続けた読書。日々培った成果とその文才は認めるべきという気がする。2016/08/07

eirianda

30
S S党員だったことをこの自伝で告白し、かなり批判されたらしいが、それはアンガージュマンの作家と言われるほど左の政治的意見を発信していたからなのだろうな。まだブリキの太鼓しか読んでないけど、作品自体は政治臭はなかったように思う。時代に飲み込まれたのだ。戦後、自責に苦しみ、時に忘れたい、グラスような傷を負った人が多くいたのだろう。戦争や動乱期を潜り抜けた作家の作品は、善悪割り切れず価値観のぶ厚いものが多いので、好き。人間って環境や状況で容易く変わってしまうものだもの。2018/02/13

Nobuko Hashimoto

23
代表作『ブリキの太鼓』を書くまでの前半生をつづった自伝的作品。玉ねぎの皮を一枚一枚剥いていくように、少年時代から1959年ごろまでを想起していく。かつての自分を「彼」という三人称で語ったり、「私」という一人称で語ったり。浮遊霊のように昔の自分のまわりをふわふわとまわりながら思い出そうとしているような部分もあれば、若かりし自分と今の自分が一体化して生々しい感覚を思い出しているような部分もあり。印象的な部分をブログにメモ。https://chekosan.exblog.jp/28749013/2018/10/21

扉のこちら側

19
初読。ノーベル文学賞作家の著者は本書で少年期にナチスの武装親衛隊員だったことを告白した。ナチスを批判してきた著者の告白は物議を醸し、ノーベル賞を返上しろとの声も出たという。この告白だけが注目される形となったが、戦争体験者の貴重な実話として、非常に価値ある作品。母を看取った日の記述が印象的。2012/11/21

ジュン

14
グラスはこの作品で17歳でナチス武装親衛隊にいたことを告白した。世界中で批判と擁護の嵐が起こった。実際には召集された戦車部隊で、すぐに米軍の捕虜となったという。謎なのはなぜ60年も告白しなかったのか?彼自身は60年間の背負い続けた重さから解放されたかったと述べている。そうだろうか?彼はホロコーストと侵略の記憶の中で戦後ヨーロッパの優等生にならざるを得なかったドイツを生きた。17歳の少年が数ヶ月SSであったことを「責任」とか「謝罪」という言葉で表すのだろうか。考え続けた1人のドイツ人がいたのだ。2016/02/11

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