無知

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  • サイズ B6判/ページ数 220p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784087733402
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

知らなかった。祖国を永久に喪失しようとは…「わたしたち、プラハで知り合いになったのでしたね?まだ、わたしのことを憶えていらっしゃる?―もちろん」亡命していた男と女はパリの空港で再会した。まだ若く魅力的な女イレナはパリから、かつてのプレイボーイでもはや初老の獣医ヨゼフはデンマークから、20年ぶりの故郷へ「帰還」する旅だった。そしてそれぞれの故郷に帰っていくふたりを待ち受けていた残酷で哀切極まりない運命とは…。

著者等紹介

クンデラ,ミラン[Kundera,Milan]
1929年チェコスロヴァキアのブルノ生まれ。52年プラハ音楽芸術大学映画学部卒業、その後同大学で文学を教える。67年に『冗談』で一躍世界の注目を浴びるが、68年の〈プラハの春〉の挫折以後教職を失い、すべての著作は国内発禁となる。75年フランスに亡命、81年フランスの市民権獲得。84年発表の『存在の耐えられない軽さ』は世界の文学界に衝撃を与え、90年発表の記念碑的作品『不滅』をもって20世紀文学を締めくくった。本書では、89年暮の〈ビロード革命〉後もフランスに留まり続けたクンデラにとって避けて通れなかったテーマに取り組み、16年ぶりにチェコを舞台に、亡命の夢の終わりを描く

西永良成[ニシナガヨシナリ]
1944年生れ。東京大学仏文科卒、パリ大学修士課程修了。東京外国語大学総合文化講座教授。同大学院地域文化研究科長。著書に、『サルトルの晩年』『ミラン・クンデラの思想』他。訳書に、クンデラ『生は彼方に』『笑いと忘却の書』『裏切られた遺言』『緩やかさ』、ヴェーヌ『詩におけるルネ・シャール』他
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Nobuko Hashimoto

18
『存在の〜〜』ほどの読み応えはないが、クンデラらしい生々しい人間洞察がいい。亡命者の祖国への帰還をテーマにしているが、先日読んだ佐藤優『亡命者の古書店』に出てくる亡命者が悲哀や使命感に満ちているのとは対照的なのが面白い。クンデラの描き出す普通の男女は実にリアル。ちょっと滑稽で、ちょっとずるくて、ちょっと痛々しい。2019/01/18

シルク

12
ブルーバックスの『記憶のしくみ』て本に、この小説の一部が引用されてたんす。「言うまでもなく私たちは、おびただしい量のことがらを忘れていく。仮に一分一秒の微細なことがらすべてを記憶するひとがいたとしよう。そのひとは人類とは関係がない。彼の悲しみも喜びも、人類のそれとはまるで様相の異なるものであろうから」…みたいなことが書かれていた。これはちょっと、引用元の小説全部を読みたいわぁ、と思った。大津市立図書館がバチコーンと所蔵してはった。借りた。読んだ。…なんか、新感覚の小説だった。要するによう分からんかった笑→2023/08/24

mejiro

8
「人間は何も知らない存在であり、無知こそが人間の根源的な状況である」と著者は言う。事情を知らない友人は、亡命者は自分の国に帰れてうれしいはずだと考える。亡命者たちは、変わってしまった祖国への困惑、周囲との埋められない溝、帰還の困難さを思い知る。哲学的な語りやシニカルなエピソードで読ませる。著者の境遇に重なる内容だけに、亡命を知らない立場でこの小説をどこまでわかるだろうとも思う。2014/09/08

syachi

6
亡命し故国のことを忘れざるを得ずまた残った人々のことを知りようがない私、またそれを知りつつも残った人々のことをあえて語る人々。故国の言葉ではなく亡命先のフランス語で描いた著者とオデュッセイアのパロディーに託した投影。どことなく離れた視点で冷笑的でありつつも存在の耐えられない軽さと同じような我が事としての辛さも垣間見えるような気がする。捨てきれないというのと後ろめたさが残るが故か。2015/08/11

umeko

6
亡命と故郷への帰還。決定的な瞬間に不在であったことが、永遠の喪失に繋がるむなしさを感じました。タイトルの「無知」は、なんだかしっくりこなかったなぁ。リズミカルに物語りは進行するのは気持ちよかったけど、少し物足りなかったかな。 2012/07/21

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