出版社内容情報
芥川賞作家が死刑制度を描いた長編小説。
刑務官の「僕」は、夫婦二人を刺殺した二十歳の死刑囚・山井を担当していた――。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
内容説明
なぜ控訴しない?―施設で育った過去を持つ「僕」は、刑務官として、夫婦を刺殺した二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している―。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
著者等紹介
中村文則[ナカムラフミノリ]
1977年9月2日、愛知県生まれ。福島大学行政社会学部、応用社会学科卒業。2002年、『銃』で新潮新人賞を受賞してデビュー。芥川賞候補となる。2004年、『遮光』で野間文芸新人賞を受賞。2005年、『土の中の子供』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
中村文則全作品読破プロジェクト。本作が16/16ラストの作品、中村文則コンプリートです。初期作品でもあり、タイトルどおり憂鬱でどっぷり暗いストーリーです。殺人、自殺、死刑、死が溢れています。そうは言いながら、かすかな希望が描かれていて好みの作品です。著者は寡作(今年の新作はなし)なので、来年の新作にまた期待したいと思います。個人的には、中村文則に推理小説ではなく幻想小説を書いて欲しいと思っています。2015/10/30
モルク
122
施設で育ち刑務官となった主人公。高校時代に自殺した友人真下が送ってきたノート、そこには真下の憂鬱、混沌、性への衝動が溢れていた。主人公も普通ではない精神状態を抱え、真下に、過去に関わる夢にとらわれていた。控訴しなければ死刑が確定する山井とは何か通じるものがある。全体的に陰うつな淀んだ水が流れている。どこかとらえどころがなく混乱する。ただ施設長の言葉に救われる。全体的に掴めなくて、レビューもバラバラ、とらえどころのないものとなった。2022/02/16
れみ
114
拘置所の刑務官として二十歳の死刑囚・山井を担当する「僕」が、自分の生い立ちや過去の記憶、影響を受けた大人や友人や恋人との日々を思い起こす…というお話。自分が生きてえうと辛い思いをする人がいる、自分には悩んだり苦しんだりする権利なんてない…という山井の思考は胸に刺さる。もし自分が何かのきっかけで死刑になるような罪を犯してしまったら…と考えると、そんな風に思いつめることも、刑の執行によって命を落とすことも怖くて仕方ない。その恐怖が犯罪抑止につながればいいんだけど…そう簡単なことではないんだろう…。2019/01/04
おいしゃん
86
夜になると、消えてなくなりたくなるほど憂鬱になるのは、昔も今も変わらない。その根源は、無力さであり、さまざまな不安である。ひとりっ子で、何でも話せる幼馴染もいなかったので、ひとりで黙々とその闇を抱えて大きくなった。その過程でこの本と出会えていたら、かなり心細さは和らいだのではないか。そう思えて、又吉さんオススメなのも納得な作品だった。2016/08/29
愛
80
憂鬱だったから、どこまでも憂鬱になりたくて読みました。読むだけで感じる罪悪感、抱いた事のない感情、未来に保障のないことへの不安。独特な文体と共に様々な感情が一気に押し寄せてきて、私の心を鋭くえぐるように切りつけてきました。何も見えない暗闇での小さな光は、全世界を明るく照らせると思えるほど、大きく、偉大で、そして何より、美しかった。2014/07/05