内容説明
ふと甦るコンブレーの記憶。そこで過ごした少年時代を貫く二つの散歩道、スワン家の方とゲルマントの方。それは物語の重要なテーマを暗示する二つの方角である。隣人スワンが経験した苦しい恋と語り手がスワンの娘ジルベルトに寄せた少年の日の恋物語。やがて保養地バルベックを訪れた語り手は美少女たちのグループと知合い、なかの一人、アルベルチーヌへと心が傾いてゆく。
著者等紹介
プルースト,マルセル[プルースト,マルセル][Proust,Marcel]
1871‐1922。パリ近郊のオートゥイユに生まれる。早くから文学に志し、未完の大作『失われた時を求めて』を死ぬまで書きつぐ。全七篇の中の第五篇以後は、遺稿に基づく死後出版。一見華やかな社交界に見られる哀歓と虚栄を通して、世紀末の社会の変遷を描きながら、愛と芸術を求める自分自身の姿を小説化し、二十世紀文学に決定的な影響を与えた
鈴木道彦[スズキミチヒコ]
1929年東京生まれ。東京大学文学部仏文学科卒。独協大学名誉教授。個人全訳『失われた時を求めて』(全13巻)で読売文学賞・日本翻訳文化賞を受賞。またプルースト研究者としてだけでなく、サルトル、ニザン、ファノンらの研究・紹介・翻訳でも知られる
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感想・レビュー
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ちゃんぐ
13
積読本消化月間として手に取ったのだが、読むのにエライ時間がかかってしまった。インクの色褪せたレシートには2004年とあり、この本を面白いと思えるには15年必要だったのだなぁ・・などと感慨に耽る(抄訳版だけどね)。20世紀を代表する文学と呼ばれるだけに、詩的であり絵画的であり実に味わい深く、読み解き講座が開かれるのも分かる気がする。ほんの刹那のひらめきを、よくもまぁ30ページも書けるなーと可笑しいやら感心するやら。でも、ちょっと油断すると2ページほど記憶が飛んでいる時がある(笑)2019/02/20
nami
12
抄訳版を買ってしまった。紅茶に浸したマドレーヌの味から引き起こされる、長く淡い回想。読む前までは勝手にご近所物語だと想像していました...。19世紀末のフランス。上流階級の人々の恋模様が複雑な心理描写を通して描き出され、文章はうっとりするほど繊細で、甘酸っぱくて愛おしい気持ちになる。語り手の初恋の少女、ジルベルトがまた可憐で魅力的。『スワンの恋』は妖艶な大人の恋愛といった雰囲気で、嫉妬や駆け引きなどの描写が秀逸。溜息がこぼれそうなほど、眩くて手の届かない、失われた時代。抄訳じゃないもので初めから読みたい。2023/04/04
Maki.
3
抄訳だというのにとてつもなく長かった…。些細な出来事にあれこれ解釈をつけて勝手に悩んだり喜んだりしてこの面倒くささはまるで私みたいだと思いました。頭の中であれこれ考え過ぎてなかなか行動しないという…。続きは読めないと思ったら、最後とんでもないところで終わりまして、読まざるを得ません。世界的名作を冒涜するような感想だ…すみません…2021/02/28
DEAN SAITO@1年100冊
2
第一編と第二編の復習のために読んだものですが、訳者の鈴木氏による、大胆かつ要所を抑えた断章の取捨選択の絶妙さにも酔いしれ、楽しむことができました。失われた時を求めての世界観の、素晴らしい見取り図だと思います。2019/01/13
kousue
1
だいぶ前に買って一度断念したが、再度チャレンジしてようやく読了。やっぱり時間はかかるが、読まずにはいられない魔力的な何かがプルーストの文章に宿っている気がしてならない。確証できないのは、原文からの抜粋であることと別訳があるということ。まずは、この抄訳版を読破してから再度考えてみたい。2013/07/30