集英社文庫
テレビジョン

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  • サイズ 文庫判/ページ数 235p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087604092
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

テレビを見ないという何気ない行為がどんなに新鮮な現実感覚を与えてくれることか。異郷の地ベルリンでひと夏を過ごす古文書学者の「ぼく」は妻子がヴァカンスで不在の期間、無為とも多忙ともつかぬ宙吊りの時を愉しんでいる。「ぼく」に起きる出来事の数々は、時にありそうもない外見をつくろうが、テレビの「現実」の嘘と比べ遙かに現実的だ。著者独自のユーモアが読者を魅了する傑作長編。

著者等紹介

トゥーサン,ジャン=フィリップ[トゥーサン,ジャンフィリップ][Toussaint,Jean‐Philippe]
1957年、ブリュッセル生まれ。’78年、パリ行政学院卒。’85年『浴室』発表、作家デビュー。同書は映画化され、続いて『ムッシュー』『カメラ』『ためらい』『テレビジョン』を発表。『ムッシュー』『カメラ』は自ら監督映画化。5編の小説は20カ国で翻訳され海外で最も読者を獲得しているフランス語圏の現代作家の一人である

野崎歓[ノザキカン]
1959年新潟県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科助教授。フランス文学・映画論専攻。著書に『ジャン・ルノワール越境する映画』(サントリー学芸賞)『フランス小説の扉』『谷崎潤一郎と異国の言語』他。訳書に『ネルヴァル全集』(共訳)他多数。トゥーサン作品の翻訳により2000年ベルギー・フランス語共同体翻訳賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

344
テレビを見るのをやめることって、そんなに重大事で生活そのものが根底から変わるものなのだろうか。私自身は、テレビを全く見ないわけではないけれど、見るにしてもあらかじめ選んで録画したものを、後で見るくらいなので、番組に振り回されるようなことはない。さて、本書は暫くの空白期間を経て書かれたのだが、いつもの飄々としたタッチのトゥーサンに特有のそれだ。「ぼく」(限りなくトゥーサンその人に近い)のベルリンでの一夏を描く。随所にフランスとの文化ギャップがあり、それも見どころの一つ。小説としての斬新さよりは懐かしさが⇒2018/04/10

shizuka

46
ジャックタチの話からふとJPトゥーサンを思い出し、そういえば昔この人の本を夢中で読んだなということもついでに思い出し、また読みたくなってきたと考えたら最後たまらなくなって本棚を探してみるものの蔵書が1冊もない。そうだ友人に貸したままだったとこれも思い出し、では読んだことのないのをと手に取ったのが「テレビジョン」。テレビと決別したフランス男のひと夏(?なぜなら息子が2歳ほど年を重ねる)の話。決別しさあ何をするのかと期待が膨らむが特に何もしない。仕事すらしない笑テレビは断固として見ない。素晴らしき心がけ。2016/02/21

Mishima

29
こんなテーマで書けちゃうのが、すごいと思う。トゥーサン2冊目。相変わらずの浮遊感たっぷりな軽いタッチ。プラス、ウディ・アレンの饒舌な主人公のモノローグを聞いているかのような説明的長広舌。くどさに舌を巻いているうちにあれよあれよとトンチンカンな文脈へ突入。なんだかんだ言っても読ませちゃうからな。2018/07/22

やまはるか

7
 絵画に関する論文を書くために奨学金を得てベルリンに滞在、妻と子供をバカンスに送り出して一夏をアパートで暮らす。「女性は顔を上げて一瞬もの思わし気に遠くからぼくをまじまじと見つめ、横顔をこちらに向けたまま下唇を悲し気に噛んだ。ぼくは直ちに目をそむけ、やさしく夢見るように、ゆったりと超然たる態度でガラスをこすり」というような描写が連続する。ひどく気取って描かれていると感じられて最後まで主人公に同化できなかった。バカンスを終えた妻と息子を迎えて家族の日常に戻るところは描写を越えて体験的に同化した。2020/04/19

yozora

5
題名通りトゥーサン風の反テレビ闘争とでもいったところか。ヒッピーみたいな友人が精神科医の代役を務めたとき、それとは対照的に患者はどの人も立派な身なりをした紳士・貴婦人であるという構図は、テレビと視聴者の関係のメタファであるともとれて面白かった。あとは言わずもがなではあるが、最後の胎児の見えないが動いているのを確かめるシーンが、表層のみを絶えず映し続けているテレビへの最も根源的な批判でもある。こういったテーマは一見すればとっつきづらくもあろうがそれを読ませるのが日常的な喜劇でありトゥーサンの手腕である。2016/03/28

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