内容説明
「人間は生意気なようでもやはりどこか、抜けている」苦沙弥先生の家に飼われている猫のクールな瞳から見ると矛盾だらけで平気で生きている人間も“愛嬌”。しかしある月夜、飲みさしのビールで酔った「吾輩」は…。縦横無尽の風刺とユーモアに苦いペシミズムをひそませて人々の共感を呼んだ漱石の処女作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mint☆
133
有名な小説なのにこの歳になって初めて最後まで読んだ。下巻も猫の人間観察日記が続く。生徒たちとのいざこざや男たちの四方山話がホントくだらなくて笑える。ラストはあっけないとは聞いていたが思わず「えーっ!」と声が出た。変に悟った猫が少し怖い。2021/04/20
扉のこちら側
80
2018年211冊め。明治という時代故に、欧米化へ進んでいく日本への疑念が呈されている。「どうしてこうなった」的な展開であるが、こういった突き抜けた手法は当時としても新鮮だったのではなかろうか。2018/06/25
aika
50
名前をもたない猫がじっと見つめるのは、人間の世界に起こる、本当に取るに足りないことばかり。人間たちはそんな日常をすっとんきょうなことを言いながらも面白く生きていて、読んでいるうちに人間も悪くはないなと思えました。野球のボールを家に落としてくる少年たちと、苦沙弥先生との攻防戦は見物だし、主人の癇癪について含みたっぷりに分析する猫のユーモアと言ったら!金田家の富子さんをめぐるラブレター事件や、寒月くんの恋の結末は、ちょっとうきうきしながら楽しめました。まるで物語の一部のような谷川俊太郎さんの解説も最高でした。2020/10/31
ねここ
34
猫はこの物語に出ている人間以上に世の中をよくみている。夏目漱石は苦沙弥先生を自分と重ねていたのかな。そう思えば、夏目漱石は色んな視点で物事をみているし、斬り捨てることもできる。初夏目漱石だったけど、また読み返したい。最後の終わり方も、これはこれで良いなと思えた。人間はちゃんと人間をみて、感心し、怒れる日が来るのだろうか。2015/03/23
還暦院erk
16
図書館本。難語をノートしながらだといつまでたっても読了できないので、ちゃっと電子辞書引いては「履歴」=外部記憶に落とし込んで読み進めて行った。難しい言葉がわからんまんまだと気になって先に行けないって…超悪い癖だ。でも広辞苑に載ってない語(当て字や明らかな造語は別)がいくつもあって、『日本国語大辞典』大明神にお伺いすることも。たとえばラストの「ふんせい(粉韲)」、これ猫の心情を理解するのに割と大事だけど読んだだけで意味が推測できる語じゃないと思う。広辞苑さん…今度は載せてプリーズ。2018/03/04